




現代演劇界の王である。王の役が多いことでも知られる王である。マクベスやオイディプスなど舞台で演じてきた王様役は数知れない。平幹二朗は、演劇、映画、テレビを問わず60年に渡って旺盛な活躍を続ける中で、40代以降、蜷川幸雄演出の舞台で数多の悲劇の王を演じ、内外で高く評価されるようになった。それにつれて映画界でも『日本海大海戦 海ゆかば』(1983年)の明治天皇や、『必殺!ブラウン館の怪物たち』(1985年)の老中など、重厚さを求められる王様的な役柄を演じることが増えていった。
平の懐の深いところは、こういった正統派の王様だけでなく、「平幹二朗の王様のイメージで遊んでみたい」と考える気鋭の監督たちの望みにも目一杯応えてみせるところだ。
実相寺昭雄監督の『帝都物語』(1988年)では陰陽師の総帥・平井保昌に扮し、林海象監督の『ZIPANG』(1990年)では金閣寺が化けて出たようなジパング王になりきってみせる。鈴木清順監督の『オペレッタ狸御殿』(2005年)では自分の美しさを誇るために息子に手をかけようとする暴君・安土桃山役を怪演し、三池崇史監督の『忍たま乱太郎』(2011年)の学園長役では原作漫画のデフォルメそのままのメイクも辞さない。「イメージがこわれる」などという器の小さいことを平は言わない。浮き世離れした変化球の王様であってもノリノリで演じてみせる。これぞ堂々の王の風格である。
近作『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(2014年)では芦田愛菜演じる小学三年生の主人公・琴子の祖父役を演じている。もちろん王様などではなく、公団住宅に住む庶民のじいさまなのだが、これがなかなか奥の深い役柄なのである。琴子と親友のぽっさん(伊藤秀優)のそばで本を読みながら2人を静かに見守る姿や、言葉の端々ににじみ出る豊かな教養は、隠居した王様のような慈愛と見識を湛えている。
いつもは見守り役の平が、琴子とぽっさんの話し合いに加わるシーンが素晴らしい。琴子には、自分がカッコいいと思ったものを真似する癖があり、ただそれが不整脈や吃音だったりするのでよく先生に叱られている。ぽっさんは、自分に悪気はなくても、その人にとっては嫌な場合があるのだと言うが、彼女にはいまいちピンとこない。
人と人との関係のあり方について、おそらく生まれて初めて必死に話し合おうとしている少女と少年の姿は、微笑ましく、せつなく、じわじわと観る者の心に沁みてくる。そこに平はひとつのサジェスチョンを与える。「ぽっさんに、琴子よ、イマジンはなあ、歳とったらなあ、わかってくることもある」からはじまる平のイマジン講義は、人間関係の齟齬を補うのは想像力なのだと説く。その語りは、自然体で、淡々としているが、圧倒的だ。このシーンがあったから、ほかの役者ではなく平だったのだろうと思えるような、貫禄の芝居である。
実はこの作品でも、ぽっさんの夢の中で、平は浮き世離れした姿(鹿を連れた寿老人)を少しだけ披露している。確かに原作でもほのめかされていることなのだが、わざわざ映像にするとは、行定勲監督も、平も、やはり遊んでみたかったのだろうか。そう想像すると、この2人の姿もまた微笑ましいのである。
次回は「三浦友和」を予定しています。
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