「住み慣れた家や地域で住み続けたい」というのは多くの人の願いです。しかし、若く健康であるうちは気にならないものの、高齢になったり障害を持ったりすると、住まいの環境はさまざまな"バリア"に満ちていることがわかります。できる限り"我が家"で暮らし続けるためには、どのような配慮が必要なのか。私たちにできる住まいの環境整備についてシリーズでご紹介します。
1効果的な家具固定法
"家庭内での不慮の事故死"や"大地震発生時における死傷被害"などの報道をみると、「家の中は本当に安全なのだろうか?」と考えさせられます。安全に安心して暮らすためには、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。前回に引き続き、バリアフリーと家具の転倒防止対策の普及推進をしている「一般社団法人わがやネット」の児玉道子さんに寄稿していただきました。
"かぐてんぼう隊"のきっかけ
寝たきりの母親と同居している高齢者からの依頼でバリアフリー工事をしていたとき、テレビで阪神・淡路大震災の映像を見ていた依頼者が「わしらは家具の下敷きになって死ぬのか!」と呟いた、その一言が、"かぐてんぼう隊"(家具転倒防止。お年寄りの家の家具を固定する活動)のきっかけでした。
今回は、家具の転倒防止(家具固定)についてです。
家具類による負傷が最も多い!?
東日本大震災以前に発生した地震で、救急車で搬送された被災者の負傷原因は、①家具類の転倒・落下物によるものが最も多く、次いで、②本人転倒、③ガラス・鋭利物によるものです(図1)。
東京消防庁で取材をした際、「"本人転倒"というのは、落下物につまずいて転倒したものも含んでいる」とのことなので、「家具類による負傷」は、実際はもっと多いと推定されます。
図1 救急車で搬送された被災者の負傷原因
〈東京消防庁 家具類の転倒・落下防止対策推進委員会「家具類の転倒防止対策推進委員会における検討結果」2005の資料より〉
どのような固定方法が効果的か?
"家具の固定"といっても、どのような方法が効果的なのでしょうか? 東京消防庁の実験では、"L型金具"の下向き取付けが最も効果が高いという結果が出ています(図2)。
そこで、"かぐてんぼう隊"の活動でも、原則として"L型金具"を使用して、家具類の固定をしています(図3)。
図2 家具転倒防止器具の効果に関するイメージ
〈東京消防庁「家具転倒実験結果(家具の挙動と転倒防止器具の検証)」2005を一部修正〉
図3 L型金具(左)と活動の様子(右)
次のページでは、おススメの家具転倒防止器具として「L型金具(下向き取付け)」と「ポール+ストッパー式」の設置方法についてご紹介します。
-
① 効果的な家具固定法