日本は「地震」「台風」等の自然災害が多い国です。
近年は、豪雨による河川の氾濫や土砂崩れも頻繁に発生しています。

今回は、災害後に支払われる『損害保険』の保険金と補償額について解説します。
火災保険や地震保険の保険金は、その後の『生活再建』には欠かせない存在です。
しかしながら、災害後に「思ったより保険金を受取れなかった。」と感じる方は少なくありません。
なぜ、そのようなことになってしまうのか?
その実態について、お話します。

保険金が思ったよりも少ない!?

実は、災害後に、期待していた額よりも少ない保険金を目にし、「これだけ?」と思った方は少なくありません。
ここでは、そんな場合の「事例と原因」を3つほど、ご紹介します。

事例①:台風被害による『火災保険』の場合

事 例
住宅が台風で損傷した。
しかしながら、保険金は修理費用の一部しか受取ることができなかった。
原 因
建物の評価額を実際の再建築費用よりも低く設定していたことが原因です。「一部保険(比例てん補)」の適用により保険金が減額されたのです。

上記の「比例てん補」とは、現存する建物の評価額に比べて保険金額が少なく設定されている契約であったことで、「保険金が少なくなった割合に応じて」計算される仕組みのことです。

例えば、建物評価額が3,000万円の物件に1,500万円の火災保険に加入していたとします。
台風で建物に1,000万円の被害が発生した場合、下記の計算により、500万円までしか保険金を受取れないことになります。

《計算例》
「3,000万円の物件に1,500万円の保険」⇒50%を補償する
被害1,000万円⇒50%の補償となり、保険金は1,000万円×50%=500万円となる。
そのため、残りの500万円はご自身で負担しなければなりません。

事例②:『地震保険』の場合

事 例
地震で自宅が被災した。
地震保険に加入していたが、保険金額は火災保険の50%までしか設定されていないことを被災後に知った。
原 因
地震保険の仕組みを知らなかった事が原因。
地震保険で設定できる保険金額は、火災保険金額の30%~50%、最大でも半額の設定になる。

地震保険で設定できる保険金額は、最大でも火災保険金額の50%です。

この上限は法律で定められています。
地震保険は国と民間損害保険会社で運営する「官民共同の保険」です。
巨大地震が発生した場合、被害が広範囲に及ぶことから民間の損害保険会社だけでは十分にカバーできない可能性があり、国がバックアップしているのです。

そのため、地震保険の保険料は割高感があり、加入の割合は若干低めです。
火災保険とセットの地震保険ですが、その補償範囲や保険金の支払い条件、免責金額等は、あらためて確認しておいた方が良いでしょう。

事例③:『家財保険』の場合

事 例
台風による大雨で布団が使えなくなった。
火災保険の損害保険会社に保険金を請求したら、出ないと言われた。
原 因
家財保険に加入していなかったことが原因。
火災保険の補償対象は「建物」と「家財」だが、契約時に「建物」のみとしていた。

火災保険は「建物」と「家財」が補償対象です。
契約内容では「建物」と「家財」は別物と考えてください。

実は、火災保険は「建物」のみで契約することが可能なのです。
つまり、契約時に「建物と家財の両方」としていないと、家財の損害は補償対象とはなりません。(※「家財保険」として「家財」のみの補償とすることもできます。)

建物は意識しますが、家財を後回しにする方は多いです。
事例③では、契約時に「建物」のみの補償としていたために「家財」の保険金を受取ることができませんでした。
全てに保険をかけることは保険料が高くなるのでお薦めはしませんが、契約の内容は確認しておいた方が良いでしょう。

適切な補償額を確保する方法

前述の事例でお分かりのように、「思ったより保険金が出ない」と感じた原因は『補償内容を正しく理解していない場合』が大半です。
適切な補償額を確保するためには、「正しい知識を持つ」・「こまめな現状チェック」が欠かせません。

「では、どこから手をつければ良いのか?」

迷われる方も多いと思いますので、下記に「手順」を用意しました。
ご実家にある「火災保険の証書」を横に置き、内容を確認してみて下さい。
(もちろん、ご自身の火災保険についてもお役立てください。)

「火災保険」内容確認の手順

Step1.保険金額は「再建築費用」が基準とされているのかを確認する

  • 不動産の市場価格ではなく、実際に建て直す場合に必要となる費用(再建築費)で保険金額が設定されているかを確認する。
  • 「建物評価額」が低いと比例てん補で減額される可能性があるため、保険金額との差異がないか確認する。

Step2.補償内容を確認する

  • 火災、風災、水災、地震等、どの災害に対応した保険なのかを確認する。
  • 火災保険の中には、「水災、地震は除外する」等の条件が付されているケースがあるため、その条件を確認する。

Step3.家財保険も併せて確認する

  • 家具、家電(パソコンやテレビ)、衣類等を補償するためには家財保険の加入が必要。その有無を確認する。
  • マンションで暮らしている場合や賃貸物件に住んでいる場合は、家財保険に付帯されている特約内容を確認する。特に賃貸の場合は「借家人賠償責任保険(特約)」に加入しているかを確認する。

Step4.定期的な見直しを行う

  • 建物の価値や生活状況の変化に応じて、保険の内容を見直す。
  • 特に新築時とその後では、再建築費が大きく異なることもあるため、その都度、金額を算出する。
  • わからない事があれば、保険代理店の担当やファイナンシャルプランナー等の専門家に相談する。わからない事をそのままにしておくことが、一番良くない。

Step5.「Step1」に戻る。ご自身が納得するまで繰り返すことが肝心。

《火災保険のちょこっと情報》

火災保険の「類焼損害補償特約」は必要か?

「類焼損害補償特約」とは、自宅で発生した火災が隣の家に燃え広がった場合に、その被害を補償する保険です。
「隣の方に迷惑をかけられない」と高齢な方は気にされる事が多いのですが、日本には「失火責任法」という法律があります。そのため、自宅の失火(重大な過失を除く)で迷惑をかけた場合でも、隣家の方は損害賠償請求ができないことになっています。
ただし、ご自身の重大な過失(例えば「寝たばこ」や「ストーブをつけたままの就寝」等)がある場合では、損害賠償の対象となります。
保険料は、他の保険と比べると割安になっていますので、親御さんがお一人でお住まい方は、現在の火災保険内容を確認しておいた方が良いかも知れません。
なお、本特約は全ての損害が補償される訳ではありませんので、その点はご注意ください。

悪徳修理業者にご用心

台風や地震等の災害時には、それに便乗した悪質商法が多数発生しています。
「火災保険を使えば自己負担なく住宅の修理ができる」、「保険金が全額出るから修理費の心配はない」と勧誘する詐欺的な悪徳修理業者が存在します。

災害時は、保険金が支払われるまでに多少の時間はかかるものです。
緊急性が高い場合(「命に係わる修繕作業」等)は、保険会社の判断にもよりますが保険金の一部仮払いは可能です。

切迫した状況でなければ、保険金が支払われた後に修理業者との打合わせを本格的に行い、そして契約に至るのが理想です。

また、悪徳業者が屋根等に細工し、不具合があるようにみせかけるケースもあります。
一度、契約してしまうと、後日、保険金が受け取れなかったために解約しようとした場合、多額の違約金を請求される事態を招くこともあります。

「保険金」を口実にした悪質な勧誘事例

「損害保険で雨どいの修理ができる」と業者の訪問を受けた。せっかくなのでドローンを使って屋根の撮影もしてはどうかと言われ、お願いした。不安になったので断りたいが、業者と連絡が取れない。
3年前に起きた災害の被災地調査員を名乗り、保険の請求期限まで半年を切ったので、保険金請求のためのサポートをすると言われ、契約したがクーリング・オフしたい。
先日の台風で雨どいが壊れ外壁もはがれた。「火災保険で修理できる」という業者が突然来訪し、保険請求手続の代行と住宅修理を依頼したがやめたい。

(※)独立行政法人 国民生活センターHPより
https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/disaster.html

(※)独立行政法人 国民生活センターHPより
https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/disaster.html

定期的な見直しと情報収集の必要性

台風や地震だけでなく、ゲリラ豪雨や線状降水帯の発生等、自然災害のリスクは絶えず変化しています。
そして、それに応じて保険内容や特約、免責金額等を定期的に見直すことは、これからの「備え」として大切です。

また、保険に関する情報収集も欠かせません。
例えば、火災保険は納めた保険料が税金の所得控除できる等、いろいろ活用できるものがあります。

「正しい知識」を持ち続けることは、一人では限界があります。
対策を一言で申し上げるとすれば、「わからない事や不安な事がある場合は、そのままにしないこと」です。

本コラムが、皆様の生活にお役立ていただければ幸いです。

※日本損害保険協会ホームページより
https://www.jishin-hoken.jp/price/

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- 次回予告 -

台風・地震が来る前に知っておきたい
~損害保険の"落とし穴"~

次回、くらしすとEYEの未来へのしおり【第14回】では、
台風・地震が来る前に知っておきたい~損害保険の"落とし穴"~
を更新予定でございます。
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