
2025(令和7)年度が始まりました。
社会保険の施策は年度で動くので、毎年4月に『法改正』や『料率』の改正がされることが多いです。
今回も2025(令和7)年度で変わる年金政策について、学んでいきましょう。
この記事の目次
年金額が引上げになります
やはり物価高の勢いが止まりません。(昨年は東京のランチ代が高いというお話をしました。)
ちなみに2025(令和7)年1月の総務省の速報値では、前年同月比で4.0%の物価上昇となっています。当然、年金も上がらないと、実質的に生活が苦しくなってしまいます。
年金の仕組みとしては、物価や賃金の変動に応じて、毎年度見直されます。
2025(令和7)年度は、「名目手取り賃金変動率」が2.3%、「マクロ経済スライドによる調整率」が▲0.4%となり、結果として前年度比1.9%の引き上げとなります。
具体的には、満額の『老齢基礎年金』は、月額68,000円から69,308円(前年比+1,308円/年額831,700円)となります。1956(昭和31)年4月1日以前生まれの方だと、月額は69,108円(前年比+1,300円/年額829,300円)です。
なお、2023(令和5)年度に新規裁定者と既裁定者の改定率が異なった影響を受け、今年度も引き続き生年月日によって年金額が分かれています。
2024(令和6)年度 《月額》 |
2025(令和7)年度 《月額》 |
増加額 | |
---|---|---|---|
新規裁定者満額 (1958年4月2日以後生まれ) |
68,000円 | 69,308円 | 1,308円 |
既裁定者1満額 (1956年4月2日~ 1958年4月1日生まれ) |
68,000円 | 69,308円 | 1,308円 |
既裁定者2満額 (1956年4月1日以前生まれ) |
67,808円 | 69,108円 | 1,300円 |
物価は確かに上がったのですが、昨年と同様、賃金がその伸び率ほどは伸びませんでした。
よって、物価上昇率を使うはずの既裁定者(1956年4月2日~1958年4月1日生まれ)の年金の伸び率は、賃金の伸び率まで抑えられ、その料率は新規裁定者(1958年4月2日以後生まれ)と同じになります。
毎回お話している内容とはなりますが、年金額は「物価変動率」や「名目手取り賃金変動率」に応じて、毎年度改定する仕組みです。
昨年同様、今年度においても「物価変動率」が「名目手取り賃金変動率」を上回っていますので、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付にするという観点から「名目手取り賃金変動率(+2.3%)」を用いて改定することになります。(このように法律で定められており、上記図「⑥」のパターンが採用されました。)
そして、今回も「マクロ経済スライド(※)」による調整(▲0.4%)が行われ、最終的に2025(令和7)年度の年金額改定率は+1.9%となったのです。
※「マクロ経済スライド」による調整は6回目です。
2015(平成27)年度、2019(令和元)年度、2020(令和2)年度、2023(令和5)年度、2024(令和6)年度、そして今回の計6回発動されています。
なお、「名目手取り賃金変動率」や「マクロ経済スライド」に関しては、昨年に詳しく解説をしておりますので、そちらをぜひ参照していただきたいです。
また、「老齢厚生年金」も昨年同様、引き上げられました。
「老齢厚生年金」は、収入に応じた保険料の総額で年金額が決まります。
厚生労働省の試算では、平均的な収入(平均標準報酬(賞与を含む月額換算)45.5万円)で40年間就業した場合、受け取り始める年金(「老齢厚生年金」と2人分の「老齢基礎年金(満額)」は月額232,784円になるとしています。
この金額は前年度より4,412円の増額です。
※「老齢厚生年金」の計算方法につきましては、弊協会サイト「「年金はいくらもらえるのか?」を学ぶ③~老齢厚生年金の計算の仕方~」をご参照ください。
国民年金保険料の改定
国民年金の保険料(納める方)は、名目賃金の変動に応じて毎年度改定されます。
2025(令和7)年度の保険料額は、前年度の16,980円から17,510円(+530円)に引き上げられます。 昨年もお話しましたが、2年前納という制度があるので翌年分も毎回発表されます。
◆【国民年金保険料の金額】
2025(令和7)年度 | 2026(令和8)年度 | |
法律に規定された保険料額 (2004(平成16)年度水準) |
17,000円 | 17,000円 |
実際の保険料額 ※( )は前年度との差額 |
17,510円(+530円) ※2024(令和6)年度は 16,980円 |
17,920円(+410円) |
ひと目でわかる「2025(令和7)年度 年金額改定一覧表」
本年度の年金改正に伴い、その内容をコンパクトに一覧表にまとめました。
改定後の年金額(老齢・遺族・障害)はもちろんのこと、物価変動に応じた改定ルールがある児童扶養手当等の金額も掲載しています。
本紙(PDF)を印刷し、お手元にてご活用いただければ幸いです。
次回は老齢年金以外の改定内容と多様化するライフコースについて
次回は老齢年金以外の障害や遺族年金の改定内容をお知らせします。
また、厚生労働省のレポートでは、今年から「多様なライフコースに応じた年金額」の発表を行っています。
こちらを参考に、様々なケースにおける年金額について深掘りしていきます。
次回もお楽しみに!
執筆者プロフィール
-
特定社会保険労務士
村田淳(むらたあつし)
ソフトウェア会社のコンサルタントを経て平成29年に開業。産業カウンセラーの資格を持ち、主に10人未満の企業を中心に、50社以上の顧問企業から、毎日のように労務相談を受けている。「縁を大事にする」がモットー。
-
特定社会保険労務士
林良江(はやしよしえ)
板橋区役所年金業務に10年以上携わり、現在も同区資産調査専門員として勤務しながら、令和4年より障害年金を中心に事務所を開業。「ひまわりの花言葉;憧れ・崇拝・情熱」が自分のエネルギー源。
- 次回予告 -
『2025年度の年金額改定』を学ぶ②
~在職老齢年金・障害年金・遺族年金等の改定について~
次回、くらしすとEYEの年金を学ぶ【第39回】では、
"『2025年度の年金額改定』を学ぶ② ~在職老齢年金・障害年金・遺族年金等の改定について~"
を更新予定でございます。
くらしすとEYEは「毎月15日」に更新を行います。
メールで更新をお受け取りご希望の方は、
「更新メールサービス」よりご登録お願いいたします。