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掲載:2019年8月15日

“目で見る”年金講座【第11回】
老齢厚生年金額の計算にはなぜ2つの計算式があるの?

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②老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算のあり方2老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算のあり方

総報酬制の導入前後に分けて計算

 総報酬制について説明したところで、あらためて老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算のあり方を見ていきましょう。図表1を再掲します。

【図表1】老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算式(再掲)

 図表1の①は、平成15(2003)年3月以前、すなわち総報酬制が導入される前に納めた保険料に基づいての計算、②は平成15(2003)年4月以後、すなわち総報酬制が導入された後に納めた保険料に基づいての計算になります。

 ①総報酬制導入以前は、賞与を含まない平均月収(平均標準報酬月額)で計算し、②総報酬制導入以後は、賞与を含めた平均月収(平均標準報酬額)で計算します。

【用語解説】

平均標準報酬月額

給与の額(報酬)を一定の幅で区分した金額(第1等級~第31等級)を「標準報酬月額」といいます。平成15年3月以前の被保険者期間における「標準報酬月額」の総額を、平成15年3月以前の被保険者期間の月数で割ったものを「平均標準報酬月額」といいます。

平均標準報酬額

賞与について、税引き前の賞与の額から千円未満の端数を切り捨てた額を「標準賞与額」といいます(150万円を超える場合は150万円とされます)。平成15年4月以後の被保険者期間における「標準報酬月額」と「標準賞与額」の総額を、平成15年4月以後の被保険者期間の月数で割ったものを「平均標準報酬額」といいます。

【事例】Cさんの老齢厚生年金(報酬比例部分)

●Cさん: 昭和21(1946)年4月21日生まれ

平成15(2003)年3月以前の平均標準報酬月額は300,000円、
被保険者期間の月数は240月(20年)

平成15(2003)年4月以後の平均標準報酬額は400,000円、
被保険者期間の月数は120月(10年)

<総報酬制導入以前の期間に係る年金額>

300,000円 × 7.125/1000 × 240月 = 513,000円

※7.125/1000は、昭和21(1946)年4月2日以後生まれの人の乗率

<総報酬制導入以後の期間に係る年金額>

400,000円 × 5.481/1000 × 120月 = 263,088円

※5.481/1000は、昭和21(1946)年4月2日以後生まれの人の乗率

計 513,000円 + 263,088円 = 776,088円

計算のもととなる給与・賞与の額は賃金上昇率に応じて見直し

 平均標準報酬月額や平均標準報酬額を計算する際に、対象となる被保険者期間における標準報酬月額や標準賞与額をすべて足し、被保険者期間の月数で割って平均額を求めることを説明しました。
 しかし、過去と現在では賃金水準が異なります。たとえば、40年前の大卒者の初任給は金額を見れば現在の半分ほどです。単純に過去の標準報酬月額・標準賞与額を採用して平均額を算出すると、年金額が現在の賃金水準に見合わなくなってしまいます。そこで、過去の標準報酬月額・標準賞与額に一定期間ごとに区分された再評価率をかけてから平均額を算出します。これを「再評価」といいます。

【コラム】

「本来の額」と「5%適正化前の従前額」

図表1にあるように、老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算式では、生年月日に応じた乗率が用いられますが、平成12(2000)年の法律改正によって、この乗率が5%引き下げられました。ただし、急激な年金額の下落を防ぐために、引き下げ後の「本来の額」と引き下げ前の額(「5%適正化前の従前額」といいます)を比較して、金額の高いほうが自動的に支給される仕組みが設けられています。

point

1.老齢厚生年金(報酬比例部分)は、総報酬制導入以前の分は賞与を含まない「平均標準報酬月額」で計算され、総報酬制導入以後の分は賞与を含めた「平均標準報酬額」で計算される

2.老齢厚生年金(報酬比例部分)を計算する際は、過去の標準報酬月額・標準賞与額に一定期間ごとに区分された再評価率を乗じ、現役世代の賃金上昇率に応じた見直しをかけてから計算される

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