家族の介護、誰がするの?
3共倒れになる前に
ヘルパーは見た!
ヘルパーさんが見た、介護者の実情を表すエピソードを2つ紹介します。これはほんの一例ですが、皆さん色々な思いを抱えて介護されていることがわかるかと思います。
【エピソード1】
私はヘルパーの仕事をしながら、近くに住む自分のお姑さんのことも数年間お世話していました。でもお姑さんのお世話のことで主人との喧嘩が増えて、話し合いの結果「業者に頼もう」とヘルパーやデイサービスを利用することにしました。私はヘルパーですから、他人にお姑さんの介護を任せて自分は外で介護の仕事をすることにジレンマもあったんです。でもある時仕事中に、お姑さんをお世話していた時とは違う声かけが出来ている自分に気付いて…。1日中お姑さんに縛られていた環境から離れてみると、お姑さんのいい所がいっぱい思い浮かんできて、優しい気持ちになれるんですよ。そうすると、お姑さんとの会話にも笑顔が増えて、業者さんにお願いして良かったんだ、と思いました。介護はやはり自分ひとりでは抱えきれない問題です。ぜひ他人を頼ってください!そのために私達プロがいるんだな、と身をもって感じています。
【エピソード2】
私は、高齢のご夫婦のお家にほぼ毎日訪問介護にうかがっています。おじいちゃんは寝たきりの方。80歳を過ぎるおばあちゃんとの二人暮らしで、お子さんは離れて暮らしているため、介護がままならないという事情から、私達に依頼されたわけです。おじいちゃんは、おばあちゃんの顔が見えなくなると不安になって怒鳴ったり不機嫌になったりで、おばあちゃんは四六時中片時も側を離れられません。私達がケアしていても、その状況は数か月続きました。でもおじいちゃんが少しずつ、私達ヘルパーの存在に慣れてきたころ、改めて「この時間だけでもゆっくり休んでください」とおばあちゃんにお話しました。おばあちゃんは「でも…」と自分が休むことに罪悪感を感じていらっしゃるようだったので、「あなたが倒れたらそれこそおじいちゃんが悲しみますよ。自分を大事にしてください」と色々お話させていただいたんですね。すると、おばあちゃんは泣かれて、「気持ちが楽になった」とおっしゃってくださったんです。私は、介護疲れで苦しむご家族の方をたくさん見てきました。それは結局のところ、誰をも幸せにはしないのだと思います。まずは、色々な方を巻き込み、人の手を借りることが大事なんだと思いますよ。
まずは相談、業者の導入検討も
上記エピソードからもわかるように、介護は「自分がやらないと!」と一人で責任を背負い込む人ほど負のスパイラルに陥りやすいものです。また、介護に時間を取られて仕事を辞めたり趣味をあきらめたりする人も少なくありません。
まずは、身近な人や、近隣の介護事業所を訪ねたり、行政の相談窓口である地域包括支援センターなどを利用するのも1つの手でしょう。自分を追い込む前に、仕事を辞めてしまう前に、とにもかくにも、まずは相談です。
そして、その次に専門業者の手を借りるかを検討すればよいのです。「業者サービスを利用するとお金がかかる」と思っている方もいるかもしれませんが、国の介護保険制度で「要介護(支援)」と認められると(要介護の程度によってレベル分けされる)、費用の1割を自己負担することで受けられるサービスがたくさんあります。頼るべきところは他人(プロ)を頼り、自分の負担をなるべく減らすような介護の道を探ってみてはいかがでしょうか?
表1【参考】介護保険制度を利用した場合の1か月の支給限度額と利用例
平成25年4月現在
※費用は、サービスの内容、要介護度、地域などによって異なります。
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