第53回 全国都市国民年金協議会及び研修会が富山市で開催
富山国際会議場

 第53回全国都市国民年金協議会(都市協)が8月27・28日の2日間、両日とも午後から、富山市の富山国際会議場で開催された。参加したのは、加盟811市区中188市区(231名)であった。
 1日目は分科会が開催され、テーマ別に3つの分科会が開かれ、それぞれの分科会には各ブロックからの代表が出席して、テーマごとに地域における課題や現状について議論した。2日目は総会と研修会が開催され、研修会では、はじめに山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大学名誉教授が基調講演を行い、続いて1日目の分科会の議論を受けてパネルディスカッションが開かれた。

分科会およびパネルディスカッション

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 1日目の分科会では、1班A「資格適用・保険料グループ」、2班B「給付・年金制度全般グループ」、3班C「情報連携・交付金グループ」に分かれて開催された。これを受けて2日目のパネルディスカッションでは、それぞれのグループのリーダーがパネリストとして分科会の議論の内容について報告し、同じくパネリストの大西友広氏と濱田聡氏が助言を行ったり、質問に答えた。司会は、吉田淳一・福井市福祉保健部年金課長が務めた。

1班A「資格適用・保険料グループ」
リーダー:赤池包子氏(富士吉田市市民課年金担当課長補佐)
テーマ:国民年金資格取得、種別変更手続きの簡素化について

【意見提案内容】

 現在、厚生年金資格喪失時の手続(国民年金資格取得届)は市区町村で受け付けているが、事業所や保険組合から提出される厚生年金資格喪失届と同時に、1号取得届またはそれに代わるものを同時提出できるようにしていただきたい。そのことで、国民年金への切り替えが迅速化され、被保険者本人が改めて手続きする必要がなくなる。また、継続して2号加入予定の方や配偶者の扶養になる方については1号取得届を提出しないことで重複加入を防ぐことは可能であり、事務量の軽減は期待できる。

赤池 意見提案内容については大多数が賛成であり、適用漏れによる年金未加入者の存在も指摘している。提案内容を実施したときのメリットは、①市区町村に出向く手間が省け利便性が高まる、②納付意欲低下防止と前納機会の増加につながる、③適用漏れの防止、④適用勧奨、職権適用等に係る事務量の軽減が可能。一方でデメリットは、①口座振替や免除申請に対する説明機会の減少、②事業主の責任が増大する、③市区町村事務軽減による交付金の減少、④正確性を欠いた届出増加が懸念される。全員が共有する問題としては、年金未加入者の存在があがった。そこで、年金教育を義務教育で行ってはどうかという意見が出された。

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大西課長 年金制度の周知・広報のためのツールとしては、市区町村の協力も得て、厚労省・機構で業務支援ツールを作成したばかりです。それから、厚労省の広報用に1分間動画を作成した。これらの活用ができるのではないか。

濱田グループ長 地域年金展開事業の一環として、何年も前から教育現場に直接出向き、年金教育を行っている。

赤池 生徒だけではなく、先生にも年金教育が必要なのではないか。

大西課長 貴重な提案として考えていきたい。

2班B「給付・年金制度全般グループ」
リーダー:門脇克美氏(境港市市民生活部市民課課長補佐)
テーマ:初診日の証明ができない場合の救済措置について
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【意見提案内容】

 障害年金の受給要件は満たしていても、初診日を証明することができない、そのことのみが原因で障害年金の請求をあきらめている人や、請求しても初診日が確認できないために却下となっている人がいる。そこで、「すべての保険料を納付期限内に納めている」「免除の手続きが遅れることなく期限内に申請されている」など、初診日がどの地点になっても納付要件に該当する場合については、「20歳前障害年金の事後重症請求」と同様の障害年金を受給できる、などの救済ができないか。

門脇 Bグループでは次のような意見・提案があった。

  • 初診日の証明書が取得できない場合でも「参考資料」があれば本人の申し立てを認めるとの新聞報道があったが、どの程度の「参考資料」であれば該当となるのか注視している。
  • 障害年金の請求漏れを防ぐため、国や県の制度として、医療機関等との連絡網を構築して、初診からスムーズに障害年金に結び付ける流れを定型化することに加え、広く国民に周知を図る必要がある。
  • 事後重症請求の場合は、例えば障害厚生年金用の「初診日における納付要件」と障害基礎年金用の「請求日による納付要件」を併用するなどの改正を要望したい。
  • 初診日について、「初診日当時の状況を把握している第三者の証明」を3名以上取得できた場合は初診日として認めるのはどうか。または、例えば初診日が現在から15年以上前にある場合、初めての相談日から10年前を初診と定め、納付要件等を確認してはどうか。

大西課長 まじめに保険料を納付した人が、初診日がわからないからといって不支給になるという事態をなくしたい、という思いは同じだ。関係資料を広く認めるなどして、初診日認定の柔軟化を提案したい。厚生年金と国民年金とでは受給額が大きく違う。不正のないように図りたい。

3班C「情報連携・交付金グループ」
リーダー:大坪早智子氏(大分市市民部国保年金課国民年金室次長)
テーマ1:市区町村からの電話照会対応の外部委託について

【意見提案内容】

 日本年金機構の平成27年度計画によると「効率的な業務運営体制」として、年金事務所および事務センターで対応している市区町村からの電話照会業務について、平成28年1月を目途に外部委託化を実施すると定められている。電話照会内容の3割が市区町村からの資格確認等の比較的簡易な照会のためとなっているが、簡易な照会は委託先へ、難しい案件は年金事務所へと照会先を市区町村が特定しないといけないのか。

大坪 市区町村からの電話照会対応業務は、年金事務所との協力・連携体制が構築されるという非常に良い面がある。この電話対応業務を外部委託してしまうと、委託先で解決されなかったときに二度手間になることや委託先職員から必要な情報が得られるかなどの不安があり、市区町村と年金事務所との連携が弱くなるという懸念があるとともに、最終的には住民サービスの低下につながることが危惧される。

濱田グループ長 外部委託に関しては多くの意見があることを改めて認識した。現段階では、あくまでも年金記録照会について外部委託を進めていく方向で検討しているところである。したがって、その他の件に関しては、従来どおり事務所と直接やり取りをしていただくことになる。機構としては年金事務所機能の効率化という流れのなかで外部委託という方向があるわけだが、電話照会については先ほど市区町村の方から、市区町村と年金事務所との協力・連携の維持という大変ありがたい評価をいただいている。この点は、機構本部、年金相談部にもきちんと伝えたい。

テーマ2:交付金制度の見直しについて

【意見提案内容】

 交付金については、毎年、全額国庫負担を求めているが、実績額とは程遠い金額しか交付されていない。
 申請事務は、複数部署から詳細な財政資料を集約し、積算しているが、窓口対応をしながらの事務処理は困難な状況にある。全額国庫負担または事務の簡略化への対応をお願いしたい。

大坪 交付金については毎回単価の引上げをお願いしているところであるが、市区町村の意見としては全額交付をお願いしたいところである。平成26年度の交付金から物件費については100%に近い状態となったものの、人件費ついてはいまだに一般財源の持出しが多い。申請事務は煩雑で時間がかかるものである。この点の改善を要望したい。交付金の引上げに関しては毎年要望していることでもあるので、ぜひとも改善に向けての対応をしていただくか、申請事務の簡略化を要望する。

大西課長 交付金については毎回ご指摘いただいている案件だが、平成26年度に関しては市区町村の皆さんの多大なるご協力によって実態調査が実現し、その調査結果を踏まえて実現できたものだった。全額交付というのは、交付金という性格からどうしても難しいところがあるのは否めない。しかし、個別にいろいろとご提案いただければ、実現できるものから実現させていきたいと考えている。当面は、申請事務の簡素化について、実現させていきたいと考えている。

テーマ3:ねんきんネットについて

【意見提案内容】

 ねんきんネットを導入しているが、閲覧情報に制限があり、使用頻度が少なく、職権適用者はねんきんネットへの反映が遅く、不在者については検索できない。ねんきんネットの導入を推奨するのであれば、市区町村が閲覧したい情報が載ったもの(可搬型窓口装置と同等のレベル)に改善していただきたい。

大坪 ねんきんネットは使いづらく、得られる情報が少ないため、すべての自治体でよくないと評価されている。閲覧情報の制限、回線の速度などに問題がある。ねんきんネットの導入を推奨するのであれば、市区町村が閲覧したい情報を掲載したものにすべきである。たとえば、国民年金・厚生年金保険の加入履歴や納付状況・免除状況などの情報が閲覧できれば、市役所からの年金事務所への問合せやその問合せに対する年金事務所の対応時間も減少するのではないか。今後の改善をお願いしたい。

濱田グループ長 ねんきんネットの充実強化は大きな課題である。ご指摘いただいた現状での不十分さをしっかり踏まえ、市区町村の皆さんのご意見をできるだけ反映させる形で充実させていきたいと考えている。

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