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全ての業種・働き方に公平な年金制度を
~第1回「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」

厚生労働省は2018年12月18日、第1回「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」を開催した。議事は「働き方の多様化に伴う被用者保険制度の課題について」など。「人生100年時代」の到来とともに働き方が多様化するなかで、社会保険制度としての課題や対応について議論を行い、社会保障審議会の医療保険部会や年金部会の検討に資することがこの懇談会の趣旨である。具体的には、(1)短時間労働者に対する社会保険の適用範囲のあり方、(2)働き方の多様化等を踏まえた社会保険の適用におけるその他の課題について検討を行っていく。

図版見出し図1 短時間労働者の被用者
保険適用要件(2017年4月~)

①週の所定労働時間が20時間以上あること

②賃金が月額8.8万円(年収106万円相当)以上であること

③勤務期間が1年以上見込まれること

④学生を適用対象外とすること

⑤規模501人以上の企業を強制適用対象とする(ただし、500人以下の企業でも労使の合意があれば適用可能)

法定16業種

①物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業

②土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業

③鉱物の採掘又は採取の事業

④電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業

⑤貨物又は旅客の運送の事業

⑥貨物積みおろしの事業

⑦焼却、清掃又はと殺の事業

⑧物の販売又は配給の事業

⑨金融又は保険の事業

⑩物の保管又は賃貸の事業

⑪媒介周旋の事業

⑫集金、案内又は広告の事業

⑬教育、研究又は調査の事業

⑭疾病の治療、助産その他医療の事業

⑮通信又は報道の事業

⑯社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業

【短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大】

 短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大については、2016年10月以降、段階的に改正されており、現行の適用要件(図1)のもと、従来の適用対象者4,400万人に加えて、新たに40万人に対して適用拡大が実施された。①の要件を「週20時間未満」まで拡大すると、さらに550万人が対象となることから、検討課題の1つと考えられる。

【被用者保険の適用事業所の範囲】

 現行制度では、常時1名以上使用される者がいる法人事業所または、常時5名以上使用される者がいる法定16業種の個人の事業所を「強制適用事業所」として、被用者保険制度への加入を義務付けており、2018年7月現在の事業所数は約218万となっている。これ以外の、強制ではないが、労使の合意により任意で適用となる「任意包括適用事業所」が約9万件となっている。この「任意包括適用事業所」について、どこまで適用を拡大できるかが、今後の適用拡大の鍵となる。

【働き方の多様化をめぐる動向】

 近年、働き方の1つとして、複数事業所において、本業も副業も雇用者として就業している人が増加している。この場合、本業の所得階級別に見ると複数就業には比較的所得が低い人が多いが、各所得階級の雇用者に占める複数就業者の割合で見ると、低所得層と高所得層において副業を持っている人の割合が高くなっている(図2)。こうした複数事業所で雇用される就業者については被用者保険の適用を事業所ごとに選択・判断し、合算はしないことが通例となっているが、この対応が適当かどうか、検討が求められている。
 また、独立して自営業者になった場合、自営業者を続けるにあたって「収入が不安定」「仕事を失ったときの失業保険のようなものがない」「社会保障が不十分」などを問題点に挙げる人が多く、自営業の人を一律に被用者保険の適用から外すことの是非が問われている。

図版見出し図2 複数就業者の本業の所得階級別分布

業種によって大きく異なる
短時間労働者の割合
(週労働時間30時間未満の労働者の割合)

1位:宿泊業、
飲食サービス業……43.6%

2位:生活関連サービス業、
娯楽業………………30.9%

3位:卸売業、小売業……23.3%

4位:医療、福祉…………20.6%

5位:サービス業(他に分類されないもの)……………18.5%


 このような短時間労働者の割合が多い業種では、被用者保険の適用率が低い傾向にあり、業種によっても社会保障の不公平が生じている現実がある。

【適用拡大を考える際の視点】

●被用者にふさわしい保障の実現

 被用者でありながら被用者保険の適用がない人に対して、被用者による支え合いの仕組である厚生年金保険による保障(報酬額に応じた労使折半の保険料負担、報酬比例の上乗せ給付)や健康保険による保障を提供する。

●働き方や雇用の選択をゆがめない制度の構築

 働き方や企業の雇い方で社会保障制度における取扱いに不公平が生じないようにすることに主眼を置いて、働きたい人の能力発揮の機会や企業運営に必要な労働力が確保されやすいようにする。

●社会保障の機能強化(適切な配分機能の維持)

 被用者保険の適用拡大を進めることは、報酬比例給付により保障を厚くすることになり、さらに、どのような働き方であっても共通に給付が保障される基礎年金の水準の確保と年金制度における再分配機能の維持にもつながる。

●人生100年時代・一億総活躍社会・働き方改革への対応

 今後の生産年齢人口の急激な減少、寿命の延伸による人生の長期化、高齢期の健康や体力の向上により、これまでは労働参加率が高くなかった世代(子育て期や中高齢層の女性、高齢期の男性など)の労働参加が進み、経済全体に影響を与えることが予想される。多様化する働き方に対応する年金制度の充実が求められる。

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