6月は、日本年金機構や地方公務員共済組合等、国民年金基金からも振込通知書等が送付されてきています。
今月は、一般的にはなじみの薄い地方公務員共済組合からの「年金額改定通知書」や国民年金基金からの「年金振込通知書」のサンプルをご覧いただいて、日本年金機構から送付される圧着ハガキの「年金額改定通知書」や「年金振込通知書」との基本的な共通点と相違点をみていきたいと思います。
(なお、サンプル図については、リアルに作成していますが、実際と同じものではありません。)
共済組合の年金額改定通知書と年金支払通知書
~圧着ハガキではなく、封書で送付~
(1)地方公務員共済組合の組合員の年金を決定する5つの実施機関
地方公務員共済組合は、平成28年4月1日現在、64組合約285万人の組合員がいます(地方公務員共済組合連合会のHPより。平成28年度決算「事業状況報告書」5頁)。
平成27年10月1日施行の被用者年金一元化後に、年金を決定する地方公務員共済組合の実施機関は、次の5つとなっています(【図表1】参照)。
【図表1】被用者年金一元化後の、年金を決定する実施機関
組合員数は同HPに掲載されている『平成28年度 事業状況報告書』による、平成28年4月1日現在の人数。各共済組合の組合員数は、千人の位を四捨五入した概数である。
(2)全国市町村職員共済組合連合会の年金額改定通知書
今回ご紹介するのは組合員数が一番多い①全国市町村職員共済組合連合会(60組合で構成)から送付された<年金額改定通知書>です。
各都道府県の市町村の職員は、政令市など一部の市を除き、すべて、都道府県市町村職員共済組合(47共済組合)の組合員となっています。
また、名古屋市や横浜市など政令指定都市の共済組合も、被用者年金一元化後は、全国市町村職員共済組合連合会が年金を決定しています(詳細は長沼明著『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』日本法令刊)。
年金三郎様の年金額改定通知書
それでは、実際に、全国市町村職員共済組合連合会から送付された<年金額改定通知書>をみてみましょう。
【図表2】(特別支給の老齢厚生年金)と【図表3】(特別支給の退職共済年金:経過的職域加算額)をご覧ください。
一元化後に受給権の発生した、年金三郎様に送付されてきたもので、この年金三郎様には、共済組合の2階部分の年金(特別支給の老齢厚生年金)と旧3階部分の年金(特別支給の退職共済年金:経過的職域加算額)の2つの種類の<年金額改定通知書>が送付されてきました。
圧着ハガキではなく、封書で郵送されてきたとのことです。封筒には、共済組合の2階部分の年金(特別支給の老齢厚生年金)と旧3階部分の年金(特別支給の退職共済年金:経過的職域加算額)の2つの種類の<年金額改定通知書>が同封されていたとのことです。
年金三郎様は、昭和29年12月生まれで、10年間ほど市役所に勤め、その前後は、国民年金のみに加入(保険料納付済)し、25年以上の受給資格要件を満たしている人です。また、民間の事業所に勤務したことはなく、厚生年金保険に加入した経歴はありません。
受給権の発生は61歳で、一元化後の平成27年12月でした。したがって、2階部分の年金は老齢厚生年金、旧3階部分の年金は経過的職域加算額が発生する人です。
一元化後に共済組合にも民間の事業所にも勤務しておらず、年金額に在職支給停止はなく、全額受給しています。
あわせて、一元化後に共済組合に加入していないので、共済組合の新3階部分の加入期間がない人です(事例はあくまでもフィクションです)。
<年金額改定通知書>の大きさ
実物の大きさは、タテ11.4cm、ヨコ21.8cm(A4用紙の横幅よりも少しい大きいので、コピーがキレイに収まらないというのが印象として強く残っています)で、ちょっと厚めの用紙で、薄い水色で文様が施されていました。
あわせて、【図表4】(年金支払通知書)が、【図表2】【図表3】といっしょに、同じ封筒に入れられていました。【図表4】の大きさは、【図表2】【図表3】と同じですが、用紙自体は白色の無地で、文様は施されていません。
【図表2】年金額改定通知書(特別支給の老齢厚生年金)【1130】
【図表2】<年金額改定通知書>は、特別支給の老齢厚生年金【1130】ですので、「年金額の内訳」欄をみると、『報酬比例額』欄のみ年金額の記載があり、定額部分や経過的差額加算の支給額はありませんので、『定額・経過的加算額』欄は「0円」との表示になっています。
一方、『職域年金額』の欄は何も記載がありません。
なお、年金三郎様には在職中の支給停止などはありませんので、『支給停止額』欄には、「0円」が表示されています。
【図表3】年金額改定通知書
(特別支給の退職共済年金:経過的職域加算額)【1170】
【図表3】の<年金額改定通知書>は、特別支給の退職共済年金(経過的職域加算額)です。「年金コード」欄をみると、【1170】とあります。
【図表2】の<年金額改定通知書>の「年金額の内訳」欄の記載内容とは逆に、『職域年金額』欄のみ年金額の記載があり、『報酬比例額』欄や『定額・経過的加算額』欄には何も記載がありません。
年金三郎様は、市役所に勤務した期間が20年以上ありませんので、旧3階部分の経過的職域加算額の年金額は、2階部分の特別支給の老齢厚生年金額のほぼ1割の年金額となっています。
このように、一度、共済組合からの<年金額改定通知書>をみておけば、年金相談にみえられたお客様が、「共済組合から、こんな書類が届いている。どういう内容なの?」と解説を求められても、あわてなくてすむでしょう。
(3)全国市町村職員共済組合連合会の<年金支払通知書>、
日本年金機構のように<年金振込通知書>とは呼称しない
年金三郎様に届いた封書には、<年金支払通知書>も同封されていました。まずは表面をご覧ください。【図表4-1】です。
【図表4-1】年金支払通知書(表面)
日本年金機構から送付される圧着ハガキ<年金振込通知書>とは、名称や様式が異なる(【図表5】参照)ことが、おわかりいただけると思います。
まず、名称が違います。共済組合から送付されるのは封書で、名称も<年金振込通知書>ではなく、<年金支払通知書>です。
あわせて、共済組合の<年金支払通知書>には、平成29年6月15日に振り込まれる年金額の記載しかありません。端数処理が加算される平成30年2月支給期の年金額の記載はありません。
<年金支払通知書>の裏面の注記を読むとその理由がわかります。(【図表4-2】参照)
【図表4-2】年金支払通知書(裏面)
全国市町村職員共済組合連合会の場合、【図表4-2】をみると、<年金支払通知書>の裏面には、まず、「年金支払通知書は、6月と12月のほか、支払額や振込先などに変更があったときに送付します。」との記載があり、次いで、「2月の支払額が、12月までの支払額の計算時に切り捨てた端数額を上乗せしたことによる変更のみであるとき」には、「(年金支払通知書は)送付しません」との記載があることから、日本年金機構の送付する<年金振込通知書>と記載方法が異なることが理解されます。
あわせて、すでに述べたように、年金三郎様には、一元化後の共済組合の加入期間がありませんので、共済組合の新3階部分である退職等年金給付(いわゆる年金払い退職給付)を受給することはありません。
しかしながら、【図表4-1】の<年金支払通知書>をよくみると(【図表4-1】の画像をクリックして、拡大するとわかります)、一番右側に「年金払い退職等給付」というの欄があるのに気がつきます。
したがって、新3階部分である退職年金(終身退職年金・有期退職年金)を受給している人には、この欄に年金額が記載されているものと認識しています。
(4)日本年金機構の圧着ハガキ-<年金額改定通知書>と<年金振込通知書>-
ここで、日本年金機構から送付される<年金額改定通知書>と<年金振込通知書>の圧着ハガキを参考までに示しておきましょう(【図表5】参照)。
事例は、昭和31年9月20日生まれの女性で、年金花子様です。60歳で、特別支給の老齢厚生年金の受給権が発生しています(事例はあくまでもフィクションです)。
【図表5】日本年金機構から送付された
年金額改定通知書と年金振込通知書の圧着ハガキ
「各期支払額」と各支払期に切り捨てられた1円未満の端数については、端数処理をされ、端数が加算された年金支払額が「平成30年2月の支払額」欄に記載されていることがわかります。
年金花子様は、まだ65歳に到達しておらず、介護保険料を特別徴収される時期になっていませんので、いずれの時期も「***」(アスタリスク)の表示になっています。
「介護保険料額」の下の欄も「***」(アスタリスク)の表示になっていますが、この欄は「国民健康保険料(税)額」など特別徴収される医療保険の保険料(税)額が黒字で印字されることになっています。
(5)国民年金基金連合会の振込通知書は、どんな様式になっているのか?
【図表6】をご覧ください。国民年金基金連合会から届いた<国民年金基金年金振込通知書>です。圧着ハガキで届きました。
【図表6】国民年金基金連合会からの国民年金基金年金振込通知書
【図表6】の<国民年金基金年金振込通知書>が届いたのは、年金みどり様(昭和31年9月15日生まれの女性)です。
圧着ハガキの宛名欄に氏名の記載はありますが、【図表6】に示した<国民年金基金年金振込通知書>欄には、氏名欄も基礎年金番号欄もありません。
問い合わせをするときは、原則として、『年金証書の記号番号』によるとのことです。
年金みどり様は、自営業の夫とともに、国民年金基金(地域型)に加入していた期間もありました。しかし、商売が厳しく、そのため会社勤めをはじめ、厚生年金保険に加入しました(国民年金基金は中途脱退の取扱い)。
その後、また、夫の仕事を手伝うようになり、会社を退職しましたが、そのときは経済的なゆとりもなく、国民年金に加入するのみで、国民年金基金には加入しませんでした。
国民年金基金を中途脱退した年金みどり様は、60歳から年金を受給できるⅢ型を組み合わせたタイプの国民年金基金に加入しており、掛金を納めていた期間に見合った年金(年額547,300円)を、60歳になってから(平成28年9月14日)、国民年金基金連合会から受け取っています(加入期間が15年未満の人は、国民年金基金連合会から年金が支給されます。事例はあくまでもフィクションです)。
繰上受給をしているわけではありません。
国民年金基金連合会から<年金額改定通知書>は届かないのか?
ところで、先に述べたように、日本年金機構からは、<年金額改定通知書>と<年金振込通知書>の圧着ハガキが届きました。
【図表6】をみてわかるように、国民年金基金連合会から届いたのは<国民年金基金年金振込通知書>のみで、<年金額改定通知書>は印字されていませんでした。筆者がサンプルを作成する段階で、省略したというわけではありません。
つまり、国民年金基金は確定給付型の年金であり、物価スライドもマクロ経済スライドの影響も受けないということなので、<年金額改定通知書>は送付されないということなのです。
年金みどり様の場合は、基本的に、65歳に到達するまでは、年金額は、年額547,300円で変わりません。 したがって、<年金振込>のみの<通知>で、<年金額改定>の<通知>はないとのことです。
国民年金基金連合会では、各期支払額の端数調整はどのように行うのか?
再び、【図表6】をご覧ください。
国民年金基金の<年金振込通知書>は、年度単位で発行され、毎年6月の支払期月(6月15日)前に、向こう1年間分(6回分)の支払額等が印字された<年金振込通知書>送付されてきます(【図表6】参照)。
それでは、国民年金基金連合会では、年金額の各期支払額の端数調整はどのように行うのでしょうか?
年金みどり様の年金額は、年額547,300円です。
各支払期における支払年金額は、年額を6で除し、1円未満の端数は切り上げます。つまり、年額547,300円を6で割ると、
年額547,300円÷6≒91,216.66円 。
91,216.66円の円未満の端数を切り上げると、91,217円となります。
この金額を各支払期月に支払うのですが、端数を切り上げていますので、12月の支給期月において、その年の1月から12月までの支払総額が、年金額(年額547,300円)を超えないように、つまり同額になるように調整するということです(国民年金基金連合会規約第38条)。
【図表6】には記されていませんが、年金みどり様には、平成29年2月支払期月・4月支払期月に振り込まれた年金支払額は、いずれも91,217円でした。
つまり、平成29年2月支払期月・4月支払期月・6月支払期月・8月支払期月・10月支払期月、の5回支給されますので、振り込む合計額は91,217円×5回=456,085円となります。
したがって、年金額・年額547,300円から456,085円を控除した金額、
すなわち547,300円−456,085円=91,215円を、
平成29年12月支払期月に支給して、いわゆる端数の調整を行うということになります(国民年金基金連合会規約第38条)。
【図表6】では、このことを強調するため、平成29年12月期の欄を赤字で印字してありますが、実際の圧着ハガキでは、黒字で印字してあります。
国民年金基金連合会では、確定した年金額が、支給されることになっています。
国民年金基金連合会では、年額12万円未満の年金は年1回の支給!
なお、年金みどり様の事例は、年金額が、年額547,300円ですので、年6回に分けての支給となっていますが、国民年金基金連合会の規約によれば、年額12万円未満の年金額は、年1回での支給になるとのことです。
その場合、偶数月に支給されるとのことですが、どの偶数月になるのかは、国民年金基金の年金の請求の時期によるとのことです。誕生日の属する月の直後の偶数月とか、そういうことではなく、規約上の明確な規定はないが、受給権者の請求のタイミングで、なるべく早く支給できる偶数月に振り込めるように対応しているとのことです。
【参考文献】
国民年金基金の関係の執筆については、『国民年金基金のハンドブック(解説編)』『国民年金基金のハンドブック(資料編)』(国民年金基金普及推進協議会)を参考としました。
また、国民年金基金や「iDeCo(イデコ)」に造詣の深い、元・埼玉社会保険事務局長の田口芳夫先生から、原稿執筆に際し、多大なご示唆をいただきました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。