特別寄稿

受給年齢の選択を考える

神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 山崎 泰彦
神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 山崎 泰彦

受給年齢選択の過去と現在

 国民年金では、昭和36年の拠出制年金の発足当時から60歳から70歳の間での繰上げ・繰下げ受給の選択制が採用され、それがそのまま新制度の老齢基礎年金に引き継がれ、現在では老齢厚生年金についても同様の選択制が導入されている。
 国民年金の選択状況をみると、かつては繰上げ受給が非常に多かったが、次第に少なくなり、今日では65歳受給が多くなっている。
 今世紀に入った平成12年度以降の状況は別表のとおりとなる。年度末現在でみると、平成17年度になってやっと繰下げ受給を含む65歳以降の受給割合が50%を超え、27年度では3分の2近く(64.5%)になった。新規裁定だけをみると、すでに平成12年度には65歳以降の受給が7割を大きく超えており、平成27年度ではほぼ9割(89.1%)になった。その背景としては、家族関係の変化や寿命の伸長などによる年金に対する期待の高まりのほか、年金額の減額にとどまらず、繰上げ受給に伴う様々な制約(不利益)について、窓口などで適切な情報提供が行われるようになったことも大きいように思う。
 しかし、65歳以上での繰下げ受給はほとんど増えず、平成27年度末現在で1.4%、新規裁定に限っても2.0%にすぎない。このデータは、基礎年金のみの受給者に限られていることに留意して読み取る必要があるが、定年制のない農業や商工業の自営業者が比較的多いことからすれば、適切な情報提供があれば繰下げ受給がもっと増えるのではないかと思う。

表 国民年金老齢年金の繰上げ・本来・繰下げの受給割合(%)

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