前回(第6回)の記事で、「『寡婦年金』をもらえる条件に『生計を維持されていたこと』と書かれているが、『死亡一時金』をもらえる条件では『生計を同じくしていた』と書かれている。この2つは違うのか?」というご質問がありました。第3回の記事でも、遺族年金をもらえる条件として「生計を維持されていた」という表現を使っていますし、年金制度ではこの言葉がしばしば登場します。そこで今回は、「生計を維持されている」ということについて解説します。

1「生計が同一」+「収入が一定未満」=「生計維持関係」

「生計を維持されている」ことが条件となるのは?

 まず、どのような年金(加算)をもらうときに「生計を維持されている」という条件が出てくるのかを見てみましょう。表に整理してみました。

【図表1】生計維持関係が要件となる主な年金(加算)

該当する年金(加算) もらえる人
(1)老齢基礎年金の振替加算 (2)(4)の加給年金の対象である生計を維持されていた配偶者(自分が65歳になって老齢基礎年金をもらうとき)
(2)老齢厚生年金の加給年金 厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある受給者(受給者に生計を維持されている配偶者または子がいるとき)
(3)障害基礎年金の「子の加算」 障害基礎年金の受給者(受給者に生計を維持されている子がいるとき)
(4)障害厚生年金の配偶者加給年金 1級・2級の障害厚生年金の受給者(受給者に生計を維持されている配偶者がいるとき)
(5)遺族基礎年金および「子の加算」 死亡した人に生計を維持されていた①子のある配偶者、②子
(6)遺族厚生年金および
   中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算
死亡した人に生計を維持されていた配偶者
(7)寡婦年金 死亡した人に生計を維持されていた配偶者

※ (2)(3)(5)の「子」は、18歳の到達年度の末日までにある子、または20歳未満で1級・2級の障害のある子に限られます。

※ (5)(6)(7)の「死亡した人」には、それぞれ、国民年金の加入状況や厚生年金保険の被保険者期間状況、その他の条件を満たしていることが必要です。

 該当する年金(加算)の内容について説明すると長くなりますので割愛しますが、興味のある方は、「ねんきんABC」「ねんきんAtoZ」の関連記事や、「ねんきん用語集」をご参照ください。
 ここでは、もらうのに「生計を維持されている」ことが条件となっている年金(加算)があるということを知っていただきたいと思います。

「生計を同じくする」にもいくつかのケースがある

 それでは、「生計を維持されている」(生計維持関係)とは、具体的にどういうことかを見ていきましょう。図表2のとおり、「生計を同じくしていること」(生計同一要件)と「収入が一定未満であること」(収入要件)の両方を満たす場合に、生計維持関係が認められます。

【図表2】「生計維持関係」の要件

 「収入要件」については次項でくわしく見ることとして、まず「生計同一要件」を見てみます。
 「生計同一要件」を満たすケースとしては、次のようなものがあります。

【図表3】「生計同一要件」を満たすケース

  住民票上、同一世帯である場合

  住民票上、世帯は別であるが住所が同一である場合

  住所が住民票上異なっているが、現に起居を共にし家計を一にしている場合

  単身赴任や就学などにより住所が住民票上異なっているが、経済的な援助や定期的な音信・訪問が行われている場合

 要するに、同じ家に住んで生活を共にしていたり、今は離れて暮らしていても仕送りなどをしており、単身赴任や就学などが終わればまた一緒に暮らすと認められるときに、「生計を同じくする」と認定されるといえます。
 生計同一の認定には、一定の書類の提出が求められます。「なぜ世帯が別なのか」「なぜ別居しているのか」などの理由については、「生計同一関係に関する申立書」に記入して提出します。たとえば、「同居しているが別世帯になっている理由」や「住民票上の住所が異なる理由」「別居の場合、経済的援助や音信・訪問の内容」などを記入します。

 なお、「生計を維持されている」ことではなく、「生計を同じくしている」ことが問われているのは、次のものです。

【図表4】「生計を同じくしている」ことが条件のもの

配偶者が受ける遺族基礎年金における、配偶者と「子」の関係 遺族基礎年金を受けられる配偶者は、死亡した人に生計を維持されていたことと、「子」のいることが条件であるが、この場合の「子」とは「生計を同じくしている」ことが条件となる。
死亡一時金を受けられる「遺族」と死亡した人の関係 死亡一時金を受けられる遺族は、死亡した人の①配偶者、②子、 ③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹で、受けられる順序もこのとおりだが、死亡した人と生計を同じくしていたことが条件となる。
未払いの年金受けられる「遺族」と死亡した人の関係 年金を受けている人が亡くなったときに未払いの年金があった場合、遺族の名で請求することで一時金として支給されるが、請求できる遺族は、死亡した人と生計を同じくしていたことが条件となる。
point

1.年金や加算を受けるには、「生計を維持されている(いた)」ことが条件となっているものがある

2.「生計を維持されている」とは、「生計を同じくしている」かつ「収入が一定未満である」ことである

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