年金講座

筆者プロフィール 長沼 明(ながぬま あきら)

浦和大学総合福祉学部客員教授。志木市議・埼玉県議を務めたのち、2005年からは志木市長を2期8年間務める。日本年金機構設立委員会委員、社会保障審議会日本年金機構評価部会委員を歴任する。社会保険労務士の資格も有する。2007年4月から1年間、明治大学経営学部特別招聘教授に就任。2014年4月より、現職。主な著書に『年金一元化で厚生年金と共済年金はどうなる?』(2015年、年友企画)、『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』(2015年、日本法令)

 一元化の支給ミスの報道が相次いでいます。

 地方公務員共済組合連合会に関する支給ミスが、平成28年2月5日付朝日新聞夕刊で報道されました。記事の見出しは『厚生年金4900人分を一元化で支給ミス』でした。これに続き、今回は、国家公務員共済組合連合会(略称:KKR)に関する支給ミスが、平成28年4月7日付朝日新聞朝刊で報道されました。記事の見出しは『共済年金1万2000人支給ミス 元国家公務員ら 一元化対応で』です(いずれも東京本社発行版)。

 詳細は、それぞれのホームページに掲載されていますので、それをご覧いただくとして、筆者には、共済情報連携システムが当初設計したとおりに機能していないことに起因しているプログラムミスのように感じられます。

 いずれにしても、在職年金の支給額などで、手計算と合わないときは、各実施機関に問い合わせて、確認する必要があるかもしれません。また、実際に計算が合わない事例がありましたら、編集部にご連絡ください。筆者も再計算して確認していきたいと思います(最終ページの最後の欄にご記入の上、送信してください。)。

 なお、年金相談の現場で、電卓で手計算をする場合には、

〈拙著『平成28年度版 被用者年金一元化ガイドシート』(社会保険研究所)〉

 ▶ https://www.shaho.co.jp/shaho/shop/detail.php?Bc=33702

 が、手元に置いてあると、算定式が記載されていますので、便利です。

 今月号では、ある共済組合から決定・交付された年金証書を紹介し、年金相談の実務担当者に資する情報を提供していきたいと思います。

一元化後に届いた別な地方公務員共済組合の年金証書
〜地方職員共済組合の決定した年金証書〜

(1)地方職員共済組合から届く年金証書の図柄・デザイン

 全国市町村職員共済組合連合会以外の地方公務員共済組合の決定・交付した年金証書も紹介しておきましょう。

 次に紹介するのは、県庁などに勤める地方公務員が加入している地方職員共済組合の決定・交付した年金証書です。

 全国市町村職員共済組合連合会のシンプルなデザインと異なり、いかにも年金証書といった複雑な文様を施してあります。

 実物そのものの文様ではありませんが、イメージとしてとらえていただければと思います。実際の年金証書はもう少し複雑な文様が背景に印刷されており、これを模倣して印刷するのは容易ではないと思わせるレベルです。

年金証書

 地方職員共済組合の決定・交付した老齢厚生年金の年金証書は、上記のとおりです。退職共済年金の年金証書の図柄・デザインも老齢厚生年金の証書と同じです。また、記載されている事項は、全国市町村職員共済組合連合会の年金証書と同じです。

(2)地方公務員共済組合から振り込まれた年金は、通帳にどう印字されているのか

■金融機関から振り込まれる年金の名称

 さて、地方職員共済組合から振り込まれる年金が通帳に印字されるときの名称ですが、

チキヨウサイ ネンキン」と印字されていました。

 一方、全国市町村職員共済組合連合会から振り込まれる年金が通帳に印字されるときの名称は、

シチヨウソンネンキン」と印字されていました。

■老齢厚生年金と退職共済年金の合算額が振り込まれる

 なお、地方公務員共済組合に加入していて、一元化後に受給権の発生した老齢厚生年金と退職共済年金については、合算された合計額が、「シチヨウソンネンキン」の名のもとに、振り込まれています。

 

 来月号では、今月号の年金証書を踏まえ、年金事務所で交付された地方公務員共済組合の決定した「特別支給の老齢厚生年金」「特別支給の退職共済年金(経過的職域)」などの年金額などに関するサンプル資料を紹介する予定にしています。

緊急告知 山崎泰彦氏・長沼明氏・大山均氏による講演を開始

 本年1月号の『年金広報』に、「被用者年金一元化をめぐって」のタイトルで、特別寄稿をいただいた山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大学名誉教授をメイン講師に、【被用 者年金一元化セミナー】が5月11日(水)・東京、5月25日(水)・大阪で緊急に開催されます。
 本セミナーでは、山崎先生による一元化の理念の講演はもとより、実務についても、『年金広報』でおなじみの執筆者である長沼明・浦和大学客員教授、『年金相談の手引』『図説 厚生年金』などで年金制度に詳しい大山均講師による講演があります。
 すでに一部新聞で報道されているとおり、被用者年金一元化の在職年金の支給停止については、一部の実施機関で支給ミスが報じられています。本セミナーは、共済組合の関係者や地方公務員の方を主な対象者にしておりますが、民間の金融機関などで年金相談の実務を担当されている方も、参加が可能になっております。また、年金相談に関心のある社会保険労務士の先生の受講も歓迎しております。
 とくに、共済組合の関係者にとっては、これまであまり接することのなかった厚生年金保険法や国民年金法の解釈になじんでおくことは、日々の年金業務を確認するうえで、また一元化法の解釈を再認識するうえでも、有益なセミナーになると編集部では考えています。
 長沼講師は、在職年金の支給停止や実務で悩むことの多い加給年金額の加算・支給停止の事例を取り上げ、わかりやすく整理して解説する予定にしてます。
 大山講師の講義では、一元化法の体系がよくわかり、一元化法を紐解くのが苦痛ではなくなったという評価をいただいています。
 なお、会場・費用・申込方法などは、主催者である社会保険出版社のホームページをご参照ください。
 ▶ http://www.shaho-net.co.jp/pdf/seminar_1604.pdf

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