年金講座

筆者プロフィール 長沼 明(ながぬま あきら)

浦和大学総合福祉学部客員教授。志木市議・埼玉県議を務めたのち、2005年からは志木市長を2期8年間務める。日本年金機構設立委員会委員、社会保障審議会日本年金機構評価部会委員を歴任する。社会保険労務士の資格も有する。2007年4月から1年間、明治大学経営学部特別招聘教授に就任。2014年4月より、現職。主な著書に『年金一元化で厚生年金と共済年金はどうなる?』(2015年、年友企画)、『年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識』(2015年、日本法令)

20歳前障がいの障がい基礎年金受給者に届いた
『圧着はがき』から読み取れること
~届書の提出期限は、7月末からいつに変更になったのか?~

 20歳前障がいによる障がい基礎年金を受給している20代の女性(A子さん)に、先月末(2019年5月末)に、日本年金機構より、圧着はがきが郵送されてきました。
 開けてみると、【障害基礎年金を受けられている方へ】というものでした(【図表1】をご参照ください)。

 内容がよくわからないということなので、A子さんから説明を求められました。
 みなさんであれば、どのように説明していかれますでしょうか?

【A子さん】
 ・20代女性(2月生まれ)
 ・平成29年(2017年)4月、20歳前障がいによる
  障がい基礎年金(障がい等級2級)の受給権発生
 ・精神障がい者保健福祉手帳2級所持(2017年3月交付)

 [参考]本稿2018年7月号参照

【図表1】20歳前障がいの障がい基礎年金受給者に届いた圧着はがき

2つの変更点-「所得状況届」が不要・「障がい状態確認届」(診断書)の提出時期が変更-

 20歳前障がいで、障がい基礎年金を受給しているA子さんのような場合、所得による制限があり、毎年7月末までに所得状況届を、市役所等に提出しなければなりませんでした。
 しかしながら、今後は、原則として提出する必要はない、ということが1項目めには記載されています。
 原則ではないとは、どういう人かというと、日本年金機構が、市町村から所得情報の提供を受けることができない人ということですが、A子さんの場合は、個人番号(マイナンバー)も登録されており、就労できる状態にはなっておらず、親の扶養親族になっていますので、所得情報の提供に問題はないと認識しています。
 なお、所得制限の所得限度額(平成31年度・2019年度の場合)ですが、単身者の場合、前年の所得額が462万1千円(給与収入の場合で、645万1千円)を超えると、障がい基礎年金は全額支給停止となります。
 また、前年の所得額が360万4千円(給与収入の場合で、518万3千円)を超えると、障がい基礎年金は半額支給停止となりますが、A子さんの場合には、収入が全くないのですから、基本的に所得制限は心配する必要はありません(20歳前障がいの障がい基礎年金の受給権者で、障がい基礎年金が全額支給停止になるというのは、筆者は寡聞にして聞いたことがありません。もちろん、所得制限に該当する人がいないということではありません。)。

「障がい状態確認届」(診断書)の提出時期は、7月末から誕生月に変更!

 実は、A子さんは、昨年(2018年)7月に、【国民年金 障がい状態確認届・受給権者所得状況届】を提出しました(【図表2】参照)。
 話が前後して恐縮ですが、A子さんは、まず、20代の半ばの、平成29年(2017年)4月に、20歳前障がいによる障がい基礎年金(障がい等級2級)の請求を行い(事後重症による請求)、受給権が発生しました。
 そして、平成30年(2018年)7月に、受給権発生後初めての、「障がい状態確認届」(診断書)の提出時期が到来し、【図表2】の【国民年金 障がい状態確認届・受給権者所得状況届】を提出したのです。
 その提出したサンプル(イメージ図)が、【図表2】になります。

【図表2】A子さんの提出した
【国民年金 障がい状態確認届・受給権者所得状況届】のサンプル

 【図表2】の【国民年金 障がい状態確認届・受給権者所得状況届】を提出したあとに届いたのが、【図表3】【次回の診断書の提出・診断書(障がい状態確認届)の審査結果】の圧着はがきです(A子さんのご家族の記憶によれば、平成30年9月頃に届いたのではないか、ということです)。

【図表3】 次回の診断書の提出・診断書(障がい状態確認届)の審査結果

 【図表3】【次回の診断書の提出・診断書(障がい状態確認届)の審査結果】の右欄を読むと、A子さんの場合、障がい等級2級が認められている、ということがわかります。

 左欄を読むと、「次回、診断書の提出時期」は、「平成32年7月」と記されていることがわかります。

提出期限の平成32年(2020年)7月は、A子さんの場合、いつに変更になるのか?

 【図表1】のA子さんに届いた圧着はがきをもう一度ご覧ください。
 そうすると、A子さんは、次回、いつ頃に「診断書(障がい状態確認届)」を提出すればいいことになるのでしょうか?
 A子さんのお誕生月は、2月です。
  「平成32年7月」としてされていた人は、「令和2年(2020年)7月以降の最初の誕生月」に変更になりますので、A子さんの場合は、「令和3年(2021年)2月」ということになります。

診断書の作成期間が拡大!

 従来ですと、A子さんのような場合、日本年金機構は6月末頃に「障がい状態確認届(診断書)」を郵送してきていました。
 一方、A子さんは「障がい状態確認届(診断書)」が届いて、7月初め頃に慌てて「障がい状態確認届(診断書)」を持参して、病院に行って、医師に「障がい状態確認届(診断書)」を作成してもらい、7月末までに日本年金機構に提出しなければなりませんでした。
 ご家族のお話によると、A子さん自身、体調の悪いときは、病院に行けない(通院できない)ときもありますし、一般論いうと、必ずしても、すぐさま、病院の医師が「障がい状態確認届(診断書)」を作成くれるわけではありません。
 これが、「提出期限が令和元年8月以降となる人が対象」 とのことですが、誕生月の3か月前の月末に日本年金機構より送付され、今後は誕生月の末までに提出していただくことに変更になる、とのことです。
 つまり、「障がい状態確認届(診断書)」の作成期間が、提出期限1か月以内から3か月以内に拡大される、とのことです(【図表1】の圧着はがきに記載された文言を参照してください)(*)。

(*)なお、詳細については、平成30年12月28日付で厚生労働省大臣官房年金管理審議官が日本年金機構理事長宛てに発出した「年管発1228第5号」を参照してください。


 これをA子さんにあてはめて考えてみると、A子さんの誕生月である「令和3年(2021年)2月」の3か月前の月末、つまり「令和2年(2020年)11月の月末」に、日本年金機構はA子さん宛に送付することになります(11月末までに、A子さんのところに届くとは記載されていない)。
 A子さんは、「障がい状態確認届(診断書)」が届いたら、「障がい状態確認届(診断書)」を病院の医師に作成してもらい、A子さんの誕生月である「令和3年(2021年)2月」の月末までに、日本年金機構に提出するということになります。
 そういう意味では、「障がい状態確認届(診断書)」の作成期間が、提出期限1か月以内から3か月以内に拡大される、ということになります。
 障がい年金を受給している人は、従来よりは、落ち着いて、対応することができるでしょうし、提出が遅れて年金が止められたらどうしよう、という心配も緩和されるように思います。

障がい等級2級が不該当になったら、8月分(変更後は、誕生月の翌月分)から支給停止となるのか?

 ところで、たとえば「障がい状態確認届(診断書)」を提出し、障がいの状態がよくなっていると判断され、障がい等級2級が不該当になったら、誕生月の翌月分から、障がい基礎年金は支給停止になってしまうのでしょうか?
 提出時期が7月末の、変更前の時期であれば、8月分から支給は停止になってしまうのでしょうか?

 平成元年3月8日付けで発出された 『障害基礎年金受給権者等の現況届の取扱いについて』(庁保発第6号)(各都道府県知事あて社会保険庁運営部長通知)があります。
 これには、次のように記されています。

1 年金額の増額改定

障害基礎年金及び旧法による障害年金(以下「障害給付」という。)の年金額の増額改定は、指定日の属する月の翌月分から行うこととしたこと。
(筆者、以下略す)

2 年金額の減額改定又は支給停止

障害給付の減額改定又は支給停止(中略)は、指定日の翌日から起算して3か月を経過した日の属する月分から行うこととしたこと。
(筆者、以下略す)

(筆者、「3」「4」以下略す)

 つまり、「増額改定」の場合であれば、「指定日の属する月の翌月分から」であり、「減額改定又は支給停止」の場合であれば、「指定日の翌日から起算して3か月を経過した日の属する月分」から、ということになります。

 したがって、従来の7月末が提出期限に指定されていたときは、増額改定の場合は、8月分から、減額改定または支給停止の場合は、11月分から減額改定または支給停止になっていたということです。

 参考までに、災害時における取扱いについても、同趣旨のことが記されていますので、紹介しておきましょう。

 平成30年(2018年)10月17日付けで、厚生労働省年金局事業管理課長が、日本年金機構年金給付業務部門担当理事宛てに発出した「年管管発1017第2号」の通知文
 【平成30年北海道胆振東部地震に際し災害救助法が適用された市町村の区域における国民年金、厚生年金保険及び船員保険の年金受給権者又は受給者にかかる届書等の取扱いについて(通知)】です(関係する部分のみの抜粋)。

3 障害年金受給権者等の届書等に関する事務の取扱いについて

 対象者のうち、診断書の提出により障害の程度を診査した結果、年金額の改定又は年金の支給停止を行うべき者の取扱いは、次のとおりであること。

(1)増額改定について

障害給付の増額改定は、誕生日の属する月の翌月分から行うこと。

(2)減額改定及び支給停止について

障害給付の減額改定、又は支給停止は、平成31年3月(提出期限の翌日から起算して3ヶ月を経過した日の属する月)分から行うこと。

(筆者注):

・対象者とは、災害救助法が適用された区域に住所を有していた受給権者等であって、その誕生日が9月1日から10月31日までの間にある人、をいう。

・届書等の提出期限が、本来であれば誕生日の属する月であるところ、平成30年11月30日に延長されていた。

障がい等級2級が、1級相当と認定されたら、いつから増額改定になるのか?

 今回の国民年金法施行規則等の改正(「平成30年厚生労働省告示第426号」)については、あくまでも、「障がい基礎年金等の受給権者の負担軽減および日本年金機構における審査事務の効率化を図るため」に行われたものであり、20歳前障がいの障がい基礎年金の受給権者が提出する「障がい状態確認届(診断書)」の届出の「指定日」が、「7月末日」から「誕生日の属する月の末日」に変更になっただけ、と筆者は認識しています。
 したがって、障がい等級2級のA子さんの場合、「令和3年(2021年)2月」の誕生月の末日までに、「障がい状態確認届(診断書)」を提出し、それが障がい等級1級相当と認定されれば、「誕生日の属する月の翌月分」である3月分から増額改定され、2級不該当と認定されれば、「提出期限である2月末日の翌日から起算して3ヶ月を経過した日の属する月」である6月分から支給停止になると、筆者は認識しています。

 A子さんに十分に説明できたどうかわかりませんが、折を見てフォローしていきたいと思っています。

*本稿は、通知文などの引用以外は、原則として、「障がい」と表記している。

本稿を執筆するにあたり、以下の書籍を参考としました。

■『平成30年度版 国民年金ハンドブック』(社会保険研究所) 130頁から131頁
■『2018年 公的年金給付の総解説』(健康と年金出版社) 295頁から296頁
■『4訂版 障害年金の知識と請求手続ハンドブック』高橋裕典著(日本法令) 296頁

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