掲載:2019年6月14日
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一人ひとりの年金の選択を支援するような年金広報へ

 2019年5月17日、厚生労働省は「第3回年金広報検討会」を開催した(座長は上田憲一郎・帝京大学経済学部経営学科教授)。議事は、「若年者向けライフプラン教育に関する調査について(年金シニアプラン総合研究機構) 」、「年金広報コンテストについて」、「年金生活者支援給付金の広報について」、「年金広報の現状と今後の検討課題について」など。
 公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構による「若年者向けライフプラン教育に関する調査」では、人生100年時代の到来を踏まえて、若年者が自らライフプランや資産形成を考えるようにするためにはどのような働きかけが必要か、具体的な取組に結び付く提言を行うことを目的として、わが国における若年者向けライフプラン教育の現状と課題をまとめた。現状では莫大な数の教材やコンテンツが存在する一方で、セミナーは50歳代が中心で若年者や学生向けの研修は多くない。また、現在の若年者には公的年金制度に不信感を抱きながらも資産形成については関心が持てない、あるいはリスクを評価するあまり現在の生活を最優先する傾向がある。こうした問題をクリアするためには、〇広く不特定の若者に働きかけること 〇職場や学校などで一定の若者の集団に働きかけること 〇若者たちが主体的に働きかけに参画すること、が重要となる。特に広く不特定の若者に働きかけるには、・SNS等による情報の共有化 ・ねんきん定期便の活用 ・情報伝達のキーワードの設定 ・キーワードを具現化するようなライフプランの作成、が鍵となる。同法人は、企業の研修や教育の場を活用することも大切であるとし、公的年金制度と社会保障の正しい理解を促進し、企業年金や個人年金などにも興味を喚起し、さらに将来の資産形成やライフプラン、資産形成にまで展開することを提示した。
 ところで、厚生労働省では、年金や老後の資産形成について若者と一緒に考えることを目的として、ポスターや動画等を募集する「令和の年金広報コンテスト」を行うこととしている。このコンテストでは、①ポスター部門、②動画部門、③自由形式部門、の3部門で、年金の広報に関する作品を募集する。7月中に厚生労働省ホームページ等で募集し、10月下旬~1月中旬の第1次審査、12月下旬の最終審査を予定している。
 また、10月に実施される「年金生活者支援給付金」は対象者数約970万人(2019年度予算)と推計されるが、その広報スケジュール(案)も示された(図4)。
 厚生労働省では、年金制度について正しく理解してもらい、制度に関する議論が建設的に進むことを目的として、年金制度の基本的な概要、財政検証の結果・制度改正の議論の状況等について周知を図るため、2019年から計画的・積極的に広報を行ってきた。2019年4月16日には「年金ポータル」を開設した。今後は、一人ひとりの年金の選択を支援し、適切な行動を促す役割を果たすために、年金広報の改善に取り組んでいく必要がある。そのためには、〇技術革新へ対応できるよう、きめ細かさ・わかりやすさについて改善等を行うこと 〇公的年金と私的年金を合わせた総合性の強化を考えること 〇行動経済学を活用し、行動変容を促す広報のあり方を考えること 〇広報の効果を把握し、PDCAサイクルを強化することが求められる。

図版見出し図4 年金生活者支援給付金の広報スケジュール(案)

図4 年金生活者支援給付金の広報スケジュール(案)
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