資産はあっても、住民税が非課税であれば、
「老齢給付金」は受給できるのか?
~課税から非課税になったときの、「給付金」の申請のタイミングとは?~
年金生活者支援給付金の、テレビCM広告・ポスター(チラシ)等の配布掲示が、本年9月から始まるという。
担当するのは、博報堂。平成29年度に、1万5千円が支給された「臨時福祉給付金(経済対策分)」のときの「確認じゃ!」のキャラクターを考案して周知したのも、博報堂だという。
令和元年5月29日(水)に開催された厚生労働省年金局の『年金広報検討会(第3回)』において、「年金生活者支援給付金の広報スケジュール(案)」(【資料3】の4頁)が示される。
あわせて、【資料4】【年金生活者支援給付金に関する効果的な周知・広報等業務について】、広報業務実施事業者である博報堂のスタッフより説明がある。
「確認じゃ!」のような統一したキャラクターを使って(A方向)、給付金対象者の行動喚起を促すのか。あるいは、対象者の心理状況をドラマ化し(B方向)、その出演者を起用し、ポスター等を作成して、行動喚起を促すのか。
行動喚起を促すといっても、これまで、筆者が本欄で執筆しているように(2019年1月号)、年金生活者支援給付金の対象者は、はがき1枚を投函すればいいだけのことなのであるが……。
振込詐欺などの特殊詐欺のことを勘案すると、政府としては、「給付金詐欺」の発生を誘引しないことも考えなければならず、「シンプルに伝わる構成」(C方向)も案として検討されている。
ご参考までに、当日の『年金広報検討会』で示された、A方向・B方向・C方向のポスターのイメージ案を見ていただこう(【資料4】【年金生活者支援給付金に関する効果的な周知・広報等業務について】 19頁・21頁・23頁)
ということで、年金生活者支援給付金の対象者あるいは高齢者が、特殊詐欺の被害に遭わないようにするためにも、正確な情報を伝えていきたいと思います。
まずは、年金生活者支援給付金のセミナー・講演で、筆者がいただいた質問です(質問内容の事例は、あくまでもフィクションです)。
なお、【Q&A】の番号については、2018年12月号からの通し番号にしてあります。
(1)資産はあっても、住民税が非課税であれば、
「老齢給付金」は受給できるのか?
Q13 70歳の女性です。夫が残してくれた住まいに、夫の遺族年金と自分の年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)で、預金を取り崩しながら、ひとりで生活しています。ほかに収入は、全くありません。
こんな生活状態ですから、住民税は非課税です。ですのに、自宅があるからということで、固定資産税・都市計画税がかかります。固定資産税・都市計画税を納めるのがとてもたいへんです。
また、私の住んでいる市の国民健康保険税では、資産割というのがあって、固定資産税の納税額に応じて、国民健康保険税も高くなるようなしくみになっています。
こんな状況ですので、10月から始まるという年金生活者支援給付金というのが、もらえますと、たいへん助かるのですが、もらえますでしょうか?
また、手続きに費用はかかりますか、手数料のようなものはとられるのですか?
それから、何か特別な書類を用意する必要はあるのですか?
資産はいくらあっても、かまわない!
A13 ご質問ありがとうございます。
平成31年度の住民税が非課税であれば、年金生活者支援給付金、ご相談者の場合、「老齢給付金」が受給できる可能性があります。
ご自宅の住宅の資産価値が2,000万円であっても、また、預貯金が仮に1,000万円あっても、住民税が非課税であれば、「老齢給付金」は受給できる可能性があります。
たとえば、平成30年中に受給した老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給額が779,300円以下であれば、国民年金の保険料納付済期間と免除期間に応じて、「老齢給付金」が受給できます(受給できる場合は、9月になると、日本年金機構から、書類が郵送されてきます。封入されているはがき形式の給付金請求書に自署してポストに投函するだけです。ただし、切手を貼る必要があります)。
また、もし、平成30年中に受給した老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給額が779,300円を超えていても、879,300円以下であれば、国民年金の保険料納付済期間に応じて、「補足的老齢給付金」が受給できます(受給できる場合は、同様に、9月にはいると、日本年金機構から、書類が郵送されてきます。封入されているはがき形式の給付金請求書に自署してポストに投函するだけです。ただし、切手を貼る必要があります)。
遺族厚生年金は、120万円受給していようが、180万円受給していようが関係ありません。遺族厚生年金は、いくら受給していても、「老齢給付金」を受給できるかどうかの、判定に影響しません。
(詳しくは、本稿2019年4月号『年金生活者支援給付金・徹底解説』をご参照ください。)
ご質問者の場合、ひとり暮らしで、住民税が非課税ということですので、「老齢給付金」を受給できるかどうかのポイントは、老齢基礎年金と老齢厚生年金をいくらぐらいもらっているか、ということになります。
手続きは無料! 特殊詐欺に遇わないように!
ご質問にあったように、資産があるからといって、特別な手続きが必要になるということはありません。
また、自宅を持っていたり、一定額以上の資産(預貯金)があると、特別な書類を用意しなければならない、ということもありません。
もしも、「ご本人様が手続きをするのはたいへんです。事務手続きを代行します、その代わり、事務代行手数料として、1万円をいただきます、あわせて、本人確認のため、クレジットカードを預からせていただきます」、と電話をかけてきたり、戸別訪問してくるという人がいれば、それは、ハッキリ言って、特殊詐欺です。気をつけてください。
(2)課税されていた夫が死亡、残された妻(妻は非課税)はいつから
「老齢給付金」を受給できるのか?
Q14 社会保険労務士です。
次の事例(【事例A】)の場合、残された妻は、いつから「老齢給付金」を受給できるのか、悩んでいます。
<質問内容>
◆この夫婦の夫が、来年の令和2年(2020年)10月10日に死亡した場合、残された妻は、住民税が非課税で、住民税が課税されていた夫が死亡したということで、同一世帯の世帯員全員が非課税の要件を満たし、老齢年金生活者支援給付金(「老齢給付金」)が受給できると考えてよろしいでしょうか?
◆受給できるとした場合、令和2年(2020年)10月11日から要件を満たすことになり、令和2年10月31日までに、遺族年金・未支給年金の請求と同時に、「老齢給付金」の請求書を年金事務所の窓口に提出すれば、令和2年11月分から 国民年金の保険料納付済期間等に応じた「老齢給付金」が受給できると考えていいのでしょうか?
A14 お見込みのとおり、と認識しています。
住民税が課税されていた夫の死亡により、住民税が非課税の妻のみの世帯となっているため、「老齢給付金」の支給要件に該当することになります。
また、後段の部分ですが、令和2年(2020年)11月分から、「老齢給付金」が支給されます。
なお、根拠条文については、これまでの連載記事をご参照ください。
(3)課税から非課税に、「老齢給付金」の請求のタイミングはいつか?
Q15 社会保険労務士です。
次の事例(【事例B】)の場合、いつ、「老齢給付金」の認定請求書を提出すればいいのでしょうか。
平成31年度(平成30年中の所得)の住民税は課税であったので、令和元年10月分から令和2年7月分までの期間、「老齢給付金」は、受給資格要件を満たさないので支給されないと認識しています。
しかしながら、令和2年度(令和元年中の所得)の住民税が非課税になると、令和2年8月分から令和3年7月分の「老齢給付金」が受給できるものと考えています。
そこでですが、「老齢給付金」の認定請求書の提出時期は、令和2年7月中に年金事務所に提出してよろしいのでしょうか?
それとも、令和2年8月に入らないと認定請求できないのでしょうか? 8月に「老齢給付金」の認定請求書を提出するとなると、その翌月分からの支給となるので、8月分は受給できず、9月分からの受給ということになり、1か月分損したような気分になりますが、どうなのでしょうか?
A15 制度がスタートするまでは、いろいろと悩むことと思います。
スタートしてしまえば、「ああ、そうか。それでいいのか」と思うことがたくさんでてくると思います。
ご質問ですが、令和2年7月中に、認定の請求手続きをしていただくことで、翌月の8月分から「老齢給付金」または「補足的老齢給付金」が受給できます。
なお、本稿3月号「(2)年金生活者支援給付金 ~給付金の支給期間~」もご参照ください。
あわせて、関係する基本的な条文を掲げておきますので、ご参照ください。
【図表1】 年金生活者支援給付金の支給に関する法律(平成24年法律第102号)
(支給期間及び支払期月)
第6条 老齢年金生活者支援給付金の支給は、受給資格者が前条の規定による認定の請求をした日の属する月の翌月から始め、老齢年金生活者支援給付金を支給すべき事由が消滅した日の属する月で終わる。
<以下、略>