『外国人と年金』を学ぶシリーズ、今回はよくあるQ&Aです。
近年、都市部や観光地では、以前に比べて様々な国の方を見かけるようになりました。
また、就労目的で日本に滞在する外国人も多くなっています。
彼らから「年金」のことを、直接、聞かれることは稀かとは思いますが、相互理解の一端として本コラムをお読みいただければ幸いです。
では、進めていきましょう!
この記事の目次
【外国人と年金 Q&A①】
脱退一時金の受給要件について

来日後、国民年金に4ヶ月加入した後、会社に入って厚生年金に加入したのですが、4ヶ月で退職して帰国することになりました。一応、来日してから6ヶ月は経っているのですが、私は脱退一時金を受け取れるのでしょうか?

非常に残念ですが、ご質問の要件では「脱退一時金」を受取ることができません。
それは、国民年金と厚生年金は別々に加入要件が判断されるからです。
【Q&A①】サクッ!と解説
「脱退一時金」の支給要件には『保険料納付済期間等の月数の合計が6月以上ある』と記載されているので、支給要件は満たしているように見えます。
しかし、国民年金と厚生年金は別々の加入期間で金額を判断します。
したがって、どちらのケースも6ヶ月未満の切捨てが行われ、結果的にどちらも受け取れない、という事になります。
国民年金加入のまま6ヶ月以上経っていれば「脱退一時金」を受け取れたのに、と矛盾した状態ではありますが、制度上、仕方ありません。
【外国人と年金 Q&A②】
「脱退一時金」受領後、再来日した場合について

「脱退一時金」を受け取って帰国しましたが、また縁があり、来日して働くことになりました。
私の年金はどのようになりますか?

「脱退一時金」を受取ってしまった場合、それまで積み立てていた年金は受け取ることができません。
また、その期間は被保険者ではなかったと見なされます。
【Q&A②】サクッ!と解説
「脱退一時金」は自分が負担した全額が戻ってくる制度ではないので、前述した質問と同様に理不尽に感じるかもしれませんが、「脱退一時金」を受け取ることで、それまでの年金の加入期間は無かったことになります。
そのため、再来日して働く予定があるなら、将来のことを考えて、あえて「脱退一時金」は受け取らない方が有利になる可能性があります。
「脱退一時金」の請求の時効は出国の翌日から数えて2年間です。
そのため、あえて最初は受け取らず、その2年間の間に日本に戻らないことが確定してから請求する、というのも一つの方法です。
【外国人と年金 Q&A③】
「社会保障協定」と「脱退一時金」について

「社会保障協定」を結んでいる国から日本に来ました。帰国をする際、私でも「脱退一時金」を受け取ることはできますか?

原則、受け取ることができます。
「脱退一時金」の制度において、国籍による縛りはありません。要件にあてはまれば誰でも受け取ることができます。
【Q&A①】サクッ!と解説
「脱退一時金」は国籍要件がありませんので、「脱退一時金」自体の要件に合致していれば、どなたでも受取ることができます。
ただし、日本と年金通算の「社会保障協定」を締結している国の場合、協定相手国の年金制度に加入していた期間がある方は、(一定の要件のもと)加入期間を通算して日本および協定相手国の年金を受け取ることができる場合があります。
この場合、加入期間が通算して120月(10年)以上ある場合は、日本の老齢基礎(厚生)年金の受け取りに必要な受給資格を満たしているので、「脱退一時金」の対象からは外れます。
また、同様に120月未満であったとしても、「脱退一時金」を受け取ることで、その期間が年金の加入期間に通算されなくなります。そうなると、自国での老後の生活に影響が出ます。
「脱退一時金」は、日本で働く外国人の年金の二重払いや、意味の無い掛け捨てになってしまうことを防ぐ制度です。
せっかく、「社会保障協定」という枠組みで年金通算という約束を結んだのであれば、わざわざ「脱退一時金」を受取る必要はありません。これらの国では、「脱退一時金」を受給するメリットは少ないのです。
ちなみに「社会保障協定」を結んでいる国は以下のとおりです。
年金通算制度の有無を含め、詳細は各国によりその内容が変わりますので、年金事務所や大使館などに問い合わせることをお勧めします。
※日本年金機構「社会保障協定について」から抜粋
https://www.nenkin.go.jp/service/shaho-kyotei/shaho.html
【外国人と年金 Q&A④】
外国人の雇用について(事業主編Ⅰ)

会社の事業主です。
外国人を採用しましたが、パートタイムやアルバイトであっても年金に入らないとダメですか?

はい、そのとおりです。
日本は国民皆保険です。例え外国籍の方であっても日本にお住まいの方で要件を満たせば、自社の厚生年金保険に加入させる必要があります。
【Q&A①】サクッ!と解説
そもそも、社会保険加入については、国籍は関係ありません。
国民皆保険の国民とは、国籍ではなく日本での雇用関係・住所を持つ者です。国籍の縛りは無いと思ってください。
特にパートタイマーやアルバイトなら年金加入不要と考える事業主の方は少なくありませんが、要件を満たせば日本人・外国人関係無く年金加入の必要性があります。
気を付けなければいけないのは、留学生のアルバイトです。
従業員51人以上の特定適用事業所(※1)だと、週20時間以上の労働で健康保険・厚生年金保険に加入する必要(2025年1月現在)がありますが、特定適用事業所においては、週30時間未満の労働者の要件には「学生でないこと」というものがあります。
短時間労働者(パート等)の社会保険加入拡大を目的として定められた事業所
「留学生ならみんな学生じゃないの?」と思うかもしれませんが、ここで申し上げる「学生」とは、学校教育法第1条(※2)の学校の学生のことです。
憲法に基づいた学校教育制度の根幹の定めに関する法律
夜間学校や通信制の学校においても、上記の学校教育法第1条の学校なら「学生」として年金加入は除外されますが、民間の語学学校や各種学校だと、この制度にあてはまらないので年金加入が必要になるということです。
つまり、その方が通っている学校が学校教育法第1条の学校かどうかを確認する必要があり、その学校の生徒でない留学生を雇った場合では、社会保険の加入義務が生じます。ご注意ください。
※「学校」の詳しい定義は、下記の日本年金機構HPをご参照ください。
https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/tekiyoukakudai/tanjikan/gakusei02.html
【外国人と年金 Q&A⑤】
外国人技能実習生や特定技能の方について(事業主編Ⅱ)

では、外国人技能実習生や特定技能の人も厚生年金に加入する必要がありますか?

はい。
両者ともに厚生年金に加入する必要があるとお考えください。
【Q&A⑤】サクッ!と解説
外国人技能実習生・特定技能の方は、どちらもほぼ必須と言って良いでしょう。
外国人技能実習生・特定技能はフルタイム雇用が前提となるため、社会保険加入の要件を自動的に満たす可能性が高いと言えます。
例外は農業など個人事業で社会保険の適用ではない場合ですが、その時は国民年金に加入することになります。
もっとも、法令上の義務ではありませんが、監理団体によっては農業でも厚生年金加入(任意適用)を求めるケースがあるようです。
どちらも在留期間に上限がある制度なので、負担の高い社会保険料を払わせるのは理不尽ではないかと思われるかもしれませんが、それは「日本に住む者」としての責務ということでしょう。
【外国人と年金 Q&A⑥】
障害年金・遺族年金・未支給年金について

外国人でも、障害年金、遺族年金、未支給年金は受け取れますか?

受取ることができますので、ご安心ください。
ただし、一定の要件があります。ご注意下さい。
【Q&A⑥】サクッ!と解説
年金の仕組み自体は、そもそも「保険」なので、掛金を支払っている以上、その要件にあてはまれば受け取ることができます。そこに日本人も外国人もありません。
ただし、要件にあてはまっていることが肝心なので、以下の点は注意した方が良いでしょう。
【障害年金の場合】
初診日の時点で日本に住所があるか、加入中であること(20歳前であれば初診日に外国居住の場合でも申請可能)。また、障害認定日の時点で日本の年金に加入しているか、加入歴があること。
【遺族年金の場合】
婚姻の実態が証明できること。事実婚でも生計同一の証明ができれば可能ですが、国によってはそれらの証明が難しいことがあるので、きちんとその証明を取っておくことが重要です。
【外国人と年金 Q&A⑦】
年金の海外送金手続きについて

帰国しましたが、年金の受給資格があります。
海外に住んでいても年金を受取ることはできますか?

できます。
手続きを完了しておけば、海外でも年金を受取ることは可能です。
【Q&A⑦】サクッ!と解説
海外送金の手続きとしては、『外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届』を年金事務所への提出が必要です。
なお、年金の受取先として指定する金融機関名や口座番号等の確認のため、口座証明、小切手帳、通帳のコピーが必要となります。
また、書類の提出先は、日本での最終住所地を管轄する年金事務所、または下記住所への提出となります。
〒168-8505
東京都杉並区高井戸西3-5-24
日本年金機構
【ご参考】
手続きに必要な『外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届』は、下記の日本年金機構HPにてご確認ください。
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/kyotsu/kaigai.files/01.pdf
※2025年より海外送金のルールが変更となり、原則として受取金融機関のSWIFT(BIC)コードが必須となりました。これらのコードが無い金融機関での年金の受け取りはできなくなります。(詳しくは年金事務所へお尋ね下さい。)
外国人をもっと身近に
いかがでしたでしょうか。
ざっくりと「外国人問題」と括られることの多い昨今ですが、少なくとも日本のルールに従って入国し、日本のルールに従って働く外国人の方を排除しようとする人はいないと思います。
彼らもまた、日本社会の一員です。
自分の周りに外国人がいない方であっても、日本のために働いてくれる外国人のために、外国人のためのルールを知っておいてはいかがでしょうか。
相互理解が深まっていき、それこそが地域社会の安全に繋がっていくのだと思います。
執筆者プロフィール
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特定社会保険労務士
村田淳(むらたあつし)
ソフトウェア会社のコンサルタントを経て平成29年に開業。産業カウンセラーの資格を持ち、主に10人未満の企業を中心に、50社以上の顧問企業から、毎日のように労務相談を受けている。「縁を大事にする」がモットー。
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特定社会保険労務士
林良江(はやしよしえ)
板橋区役所年金業務に10年以上携わり、現在も同区資産調査専門員として勤務しながら、令和4年より障害年金を中心に事務所を開業。「ひまわりの花言葉;憧れ・崇拝・情熱」が自分のエネルギー源。

