10月1日の一元化の施行日まで、あと2か月あまりとなりました。
市議会議員であった人が議員年金を受給しながら、会社の役員(厚生年金保険の被保険者となる)をしていると、一元化後は議員年金は支給停止になるのでしょうか? また、厚生年金を受給している人が、市議会議員であると、一元化後は、受給している厚生年金に、何か影響が出てくるのでしょうか?
共済年金を受給している人が、市議会議員の場合はどうでしょうか?
今月はそんな事例を取り上げながら、相談形式で年金相談の現場で役立つ情報を提供していきます。
地方議会議員の議員年金の基本知識
〜地方議会議員の議員年金は、地方公務員共済組合が支給している年金なのですか?〜
まずは、地方議会議員の議員年金の基本的な知識を確認しておきましょう。
地方議会議員の議員年金の運営主体
地方議会議員の議員年金(以下、とくに断らない限り、ただ単に「議員年金」と記します)の運営主体には、地方議会議員の区分に応じ、都道府県議会議員共済会、市議会議員共済会、町村議会議員共済会の3つがあります(以下、「地方議会議員共済会」という)。この3つの共済会が、それぞれ都道府県議会議員、市議会議員(区議会議員を含む)、町村議会議員だった人で、議員年金の受給権を有する人に議員年金を支給しています。
地方公務員共済組合が地方議会議員の議員年金を支給しているわけではありません。また、一部の年金冊子に、「都道府県議員共済組合」「市議会議員共済組合」「町村議員共済組合」と表記されている事例がありますが、地方議会議員に共済組合はありませんので、単なる「都道府県議会議員共済会」「市議会議員共済会」「町村議会議員共済会」の誤記と筆者は認識しています。
議員年金は廃止されたのではないのか? 廃止になった議員年金の給付の種類は?
議員年金の給付の種類には、退職年金、遺族年金、公務傷病年金、退職一時金、遺族一時金があります。
議員年金制度は廃止になったので、もう議員年金は支給されていないのではないか、と認識されている方もいるかもしれません。
たしかに、議員年金は、平成23年5月27日に、「地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律」(平成23年法律第56号。以下「廃止法」という。)が成立し、平成23年6月1日をもって廃止されました。
しかしながら、議員年金制度が廃止された平成23年6月1日の時点で、議員年金を受給していた人には、引き続き、議員年金の支給は継続されることになっています。
また、廃止時点で、議員の退職年金の受給資格を有する人(議員在職12年以上の人)は、退職年金または退職一時金を選択することができました(議員在職12年未満の人は退職一時金を支給)。
遺族年金は退職年金を受給していた人または退職年金の受給権を有する人が死亡したときに、その死亡した人によって生計を維持されていた配偶者などに、退職年金の年金額の2分の1が支給されるものです。
議員年金廃止後は、廃止法に基づき、同じ給付内容で遺族年金も公務傷病年金も支給されます。
退職議員年金の支給開始年齢 -任期開始時期・生年月日により異なる-
地方議会議員の退職年金の支給開始年齢は、昭和61年3月31日以前に任期が開始した議員については、12年以上議員として在職し、議員年金の受給資格を満たすと、退職を要件として、55歳から支給されていました(55歳前に受給資格を満たしていても、55歳になるまでは若年停止となる)。
しかしながら、昭和61年4月1日から平成7年3月31日までに任期が開始した地方議会議員については、12年以上議員として在職し、議員年金の受給資格を満たして、退職すると、60歳から支給されるように支給開始年齢が変わりました。
なお、平成7年4月1日以後に任期が開始した地方議会議員で、昭和24年4月2日以後生まれの人は、一律、65歳からの支給開始となっています。それまでの生年月日の人については、生年月日によって、支給開始年齢が異なります。以上の関係を、一覧表でまとめました。【表1】をご覧ください。
あわせて、議員年金の支給開始年齢に、男女の違いはありません。男女とも、同じ支給開始年齢です。
【表1】議員の就任年月日と退職議員年金の支給開始年齢
【出典】平成23年6月に、都道府県議会議員共済会・市議会議員共済会・町村議会議員共済会が発行した『退職共済年金を受給されている皆様へ』『年金支給年齢に達していない皆様へ』というパンフレットの7頁のデータを筆者が一部加工して作成。
退職議員年金の年金額の算定
退職議員年金の年金額は、以下の算定式により、求められます。
退職議員年金の年金額(年金基本額)= 平均標準報酬年額×{ 36/150+0.72/150 ×(在職年数-12)}
※平均標準報酬年額とは、退職月以前12年間の標準報酬月額の総額を12で除して得た額をいう。ただし、いくつかの経過措置がある。
※在職年数とは、原則として、議員の任期が開始した日から平成23年5月31日までの在職期間をいう。
【出典】前掲パンフレットの5頁・6頁。