︱2018.8.15 8月号 (通巻710号) Vol.65

最低賃金の引上げは厚生年金保険加入者増加につながるか
厚生労働省は平成30年7月26日、中央最低賃金審議会(第51回)を通して「平成30年度地域別最低賃金額改定の目安について」を報告した。改定の目安では全国都道府県をA~Dランクに分け、Aランク27円、Bランク26円、Cランク25円、Dランク23円の引上げが提示された(表1)。
同審議会に出席した労働者側委員は、全国的に最低賃金の水準が依然として低く、地域間格差が大きいとの見解を示し、800 円以下の地域別最低賃金をなくすことが急務であると主張した。また、日本医療労働組合連合会は、全国の看護師(病院を営む使用者に使用される看護師 869,666人)と介護職員(老人福祉・介護事業で直接介護に従事する介護職 1,831,000人)について、現状の就労実態に即した特定最低賃金の適用決定を求め、その旨を申し出ている。
短時間労働者の厚生年金保険・健康保険への適用条件(全て満たしていること)
①週20時間以上
②月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
③勤務期間1年以上
④学生は適用除外
⑤従業員501人以上の企業(平成29年4月からは500人以下の企業でも労使の合意があれば適用される)
なお、「社会保障改革」を進める厚生労働省では、高齢社会を見据えて厚生年金保険加入者の増加を目指している。平成28年10月からは「短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大」が実施されているが、適用条件の目安の一つとしてあげられている〔月額賃金8.8万円(年収106万円)以上〕を満たすためには、少なくとも時給1,100円(月80時間で計算。月120時間で計算すると733円)であることが必要で、賃金条件だけを見ると、厚生年金保険等の適用まではまだ十分とは言えないのが現状である。
表1 平成30年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安


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