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米子年金事務所(鳥取県米子市)

 JR山陰本線の米子駅から約2km、米子市役所からは2km弱の距離にある米子年金事務所。行政に対して不正を許さず、本音を言う米子の住民気質にも鍛えられ、地域住民の信頼と安心を得られるよう、職員一丸となって、事務所の改善に取り組む米子年金事務所を取材した。

米子年金事務所の沿革

 米子年金事務所は、昭和35年7月、米子社会保険出張所として、米子駅前(米子市万能町)に開所され、鳥取県西部の社会保険業務を担ってきた。開所以前は、鳥取県庁保険課・国民年金課の管轄であり、鳥取県西部区域の社会保険業務は大変な不便が強いられていた。社会保険庁の発足に伴い、昭和37年10月には米子社会保険事務所に名称を変更。管轄区域は鳥取県西部地方2市3郡(14町1村)となった。
 昭和55年3月、建物の老朽化により、米子駅前から現在の同市西福原へ新築移転。昭和59年4月には、倉吉社会保険事務所が新設されたことに伴い、米子年金事務所管轄内の東部寄りの東伯郡(赤崎町、東伯町・大栄町)が倉吉社会保険事務所の管轄となった。
 平成16年10月、「平成の市町村合併」により、西伯郡淀江町が米子市と合併。西伯郡中山町と名和町および大山町が合併し大山町へ、西伯町と会見町が合併し南部町へ、西伯郡岸本町と日野郡溝口町が合併し伯耆町となった。米子市と境港市の合併は直前に行われた境港市の住民投票により破談となった。これにより米子年金事務所の管轄は現在の米子市、境港市、西伯郡大山町・伯耆町・南部町・日吉津村、日野郡江府町・日野町・日南町となり、2市6町1村の9市町村となった。
 平成21年12月31日、社会保険庁・社会保険事務所が廃止され、平成22年1月1日、日本年金機構米子年金事務所として新たにスタートし、地域住民の信頼を回復すべく、職員一丸となって取り組んでいる。

*以上、米子年金事務所資料提供。

出所:鳥取県公式ホームページ
https://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=9577

*鳥取県の地図の青(西部)が米子年金事務所、緑(中部)が倉吉年金事務所、橙(東部)が鳥取年金事務所の管轄区域。

米子年金事務所管轄区域の自然と産業

 米子年金事務所が管轄する鳥取県西部地方は、海は日本海が広がり、山は中国地方最高峰の大山がそびえる、自然豊かな地方。主な産業として、農林水産業や製造業、観光産業も盛んだ。農業では、米、野菜、果物と多品目を栽培、収穫。果物では特に梨とスイカが有名だ。
 林業では、杉やヒノキ、松などを山間部において生産。木材は住宅等に使用する。漁業は日本有数の漁港である境港を有し、アジ・イワシ・サバ・イカ・カニ・マグロなど多くの漁獲がある。また、11月上旬解禁となったカニの水揚げは鳥取県が日本一を誇る。
 製造業では、電気機械関連で電子部品の製造工場や食品関係の加工・製造会社、また衣料・衣服関係の会社もある。
 昔から、米子は山陰経済の商都として位置づけられ商業が活発な地域。観光資源では大山や、境港市にはJR境港駅から約800メートルに亘る、漫画家の「水木しげるロード」が延び、「ゲゲゲの鬼太郎」の妖怪ブロンズ像177体が連なる。また、米子市郊外の皆生温泉には多くの観光客が訪れる。

地域住民の信頼を回復し、機構職員も憧れる、異動したい事務所をめざす
――河上親資所長

河上親資所長

河上親資所長

 河上親資所長は平成29年1月に米子年金事務所に赴任。それまでは平成26年4月から京都府の上京年金事務所所長を、その後平成28年4月から日本年金機構本部人材開発部人材育成グループ教授を務めていた。総務課・厚生年金適用調査課・厚生年金徴収課・国民年金課・お客様相談室の4課1室体制からなる米子年金事務所は、36名で業務を行う。
 年金記録問題が直接の原因となって、社会保険庁が廃止され、日本年金機構が発足、再スタートしたが、その後も様々な課題が発生し、年金機構は対応を求められてきた。河上所長が米子年金事務所に着任してからも、振替加算が支給されていなかった問題、扶養親族等申告書の外部委託業者の入力漏れや入力誤りが発生し、その対応に追われてきた。
 その一方で、河上所長は、課題解決に向け、まじめに一所懸命に取り組んできたことで、事務所自体も確実に改善され、地域住民の事務所への信頼も得てきた、と実感する。
 「日本年金機構になってもう9年になりますが、年金記録問題を経験した職員がかなり減ってきていて、機構設立後の新規採用の職員も2割を超えるようになっています。そうしたなか、年金機構になったときの状況であったり、そのときの課題とされていたことがだんだんと風化したりするような時期になっているのだろうとも思うのですが、私たちはそのことを風化させてはいけないし、年金機構になって以降も、昨今の不正アクセス問題も含めその後も様々な課題に直面し、繰り返しそれらの課題に対応してきたからこそ、その都度、より良いものを求めて改善や改革をし続けてくるができたのではないかと思っています。職員についても、年金機構ができたときの感覚を風化させずに持ち続けることができているのかなという気がしています」

豪雪地帯の南限である米子年金事務所は雪かきが冬の日課

 米子年金事務所に着任して最も苦労しているのが大雪への対応だ、と河上所長は言う。
 「私は鳥取県の隣の島根県の出身ですが、こちらに赴任するまでは、米子はこんなに雪が多いとは思いませんでした。聞くところによると、米子は豪雪地帯の南限と言われていまして、雪が降り始めると、それが根雪として残ります。道路は除雪するので何とか通れるようになるのですが、歩道や事務所の駐車場は冬場、雪かきが欠かせません。毎日、汗だくになるので着替えを必ず持参しています。事務所の車庫には除雪機が置いてありますが、それでも雪かきは大変で、鳥取県でも米子よりも東にあり、事務所に融雪装置のある倉吉年金事務所と鳥取年金事務所がうらやましい限りです」

着任後、事務室や書庫のキレイ化に取り組む

 「私は、近畿や東京、広島など、あちこちの年金機構組織への赴任経験がありますが、事務所全体の『きれいさ』ということでは、米子年金事務所は意識がまだ低いと感じています。それは、米子年金事務所も鳥取年金事務所もそうなのですが、倉吉年金事務所が設立されるまでは、職員数に対して比較的スペースが確保されていたので、ついついそこにモノを置いてしまっていました。こちらに着任してすぐにやらなければいけないと思ったことは、事務所の『キレイ化』で、書庫も含めて、まわりにモノを出さないように努めてきました。ようやく整理され、きれいになってきたのですが、どこにどの書類があるのか、誰もがわかるように整理されているところまでは依然至っていません。そこで、今後は見た目だけでなく、本当の意味で機能面でも整理された『キレイ化』を徹底させていきたい」と河上所長は一層の取り組みを図っていく考えだ。
 「キレイ化」に向けて、課ごとにノー残業デーではない日の夕方1時間と決めて取り組んでいるのだが、なかなか進まないのが現状。「だが、コツコツやらないと、なかなか変わっていきませんから、なんとか今年度中に目途をつけて、来年度を迎えたいと思います」と河上所長は話す。

本音で厳しい指摘をするお客様の満足度を高める

 「米子はいわゆる商業の町で、『山陰の大阪』と言われ、商人気質のある土地柄で、ある意味、お客様が当事務所の業務についても、本音で厳しい指摘や苦情を言ってきます。そうしたことから、職員も緊張感を持って業務に当たっています」と話す河上所長は、事務所のサービス向上は「お客様に育てられた賜物だ」との実感を持っている。
 点字ブロックの「止まれ」の位置に立ったときに、自動ドアが開かなった。隣にある銀行の玄関では、「止まれ」の位置まで人が行くと自動ドアが開くようになっていた。こうした指摘を、ある日、お客様から河上所長は受けた。「お客様の立場に立つと言いながらも、実際にはそうなっていなかったことを反省しました。本当にお客様の立場に立つということがどういうことなのかを、お客様から直接、言われたということを職員に伝え、『優しさ』も兼ね備えた事務所にしていきたいと考えています」

管轄の市町村とは研修会を通じて連携。情報端末も貸し出して

 特に、国民年金事業については市町村との連携・協力が不可欠だ。米子年金事務所では、市町村の職員と顔つなぎをすることを重視し、できるだけ、面と向かって話をするよう機会を設けている。また、先日は市町村から障害年金の研修をしてほしいという要望があり、同事務所に市町村の担当者を招いて、研修会を実施した。
 現在、市町村には情報端末を貸し出していることから、以前のように記録確認の電話照会はだいぶなくなったそうだ。「今年3月からは記録確認をマイナンバーでできるようになったので、事務所に照会する手間もなくなってきたのではないかと思います」と河上所長は話す。
 連携・協力ということでは、市町村に相談にきた住民に対して、市町村が年金事務所の相談の紹介に予約制度を勧めてくれている。
 「市町村からは事務所とのホットラインの電話を使って相談予約をしていただき、予約制度の普及や相談業務の効率化ということでもご協力いただいています。また、厚生年金の請求の相談であっても、添付書類は市町村で取り寄せる書類なので、市町村との連携が非常に重要になってきます」

職員が異動を希望するような事務所になればお客様の満足度も向上するはず

 お客様が業務に対して厳しい指摘をするという土地柄から、米子年金事務所への異動に尻込みする職員もいる、と河上所長は言う。
 「それには米子年金事務所は『働きやすい』と思ってもらうことが一番です。そのためには職員同士がコミュニケーションを取れるよう事務所全体で交流・理解を深め、年金機構の職員から異動先として希望されるような、働きやすい職場となっていくことが、お客様の満足度の向上にもつながっていくと思っています」と河上所長は話す。

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