さて、前回は2026(令和8)年度の年金改定について解説をさせていただきました。
ここ数年の年金の改定には、今後の年金の方向性について、国からのメッセージが含まれているように思っています。
今回はどんな方向性があるのか、解説をさせていただきます。
この記事の目次
少子高齢化でも労働人口は減っていない
ここで意外なデータを一つお見せします。
日本は急速な少子高齢化の流れがあることは皆さんご存知であると思います。
そうなると当然、老人が増えて、働き手が減ると予想できますよね。
しかし今のところ、この労働力は減っていません。
労働力人口も就業者数も一定数を維持しています。
むしろ労働力人口においては、1985年の5,963万人対して、2022年は6,902万人と増加しています。
少子化の流れというのは一般的に1975年頃から始まったと言われています。
その子供たちは今や労働力人口の主力です。
これまでメインの労働力であった男性の数が減っていることは間違いありませんが、その穴を埋めているのは女性と高齢者であるということは想像がつきます。
これは、裏を返せば女性や高齢者が社会で働きやすくなり、社会の理解も増してきたとも言えます。そのために男女雇用機会均等法や高年齢雇用安定法などの整備が行われてきました。
この流れは少子化が続くとしか思えない現代においても変わらず、今後も性別や年齢に関係なく働く人数を増やしていくという方向性になると思われます。
高齢者が働きやすい環境を作る
前回に解説した「在職老齢年金」の支給停止額の引き上げもその流れの一つです。
年金受給世代にとって、年金を受け取りながら、同時に働いて社会とのつながりを作るというのは、今はライフスタイルとして主流になりつつあります。このときに働いた結果として年金を減らされたとしたら、それは理不尽なことであり、結果として労働意欲が落ちてしまうことになります。
「在職老齢年金」の支給停止額は、個人事業の収入などには影響しないといった不均衡もあり、以前からその必要性について議論がされてきました。いずれはこの支給停止額のさらなる引き上げ(※)や、在職老齢年金自体の廃止といったところも予想されます。
また、2026年(令和8年)4月1日施行の改正労働安全衛生法では、すべての事業者に対して、60歳以上の高年齢労働者の労働災害防止措置を講じることが努力義務となりました。具体的には、床面の段差解消や滑りにくくするなどの負担軽減、高年齢労働者向けの安全衛生教育の実施、身体機能チェックなどの措置を講じることが求められるようになります。
既に高齢者雇用安定法において65歳までは希望者全員に対しての雇用確保が義務であり、70歳までの安定的な雇用環境を整えることが努力義務となっています。
高齢者が安定して働きやすくなったことはポジティブに捉えられることですが、それだけ60歳以上でかつてはリタイアしていた世代に対して「現役並み」に社会参加や就労が期待される時代になったとも言えます。
厚生労働省 「エイジフレンドリーガイドライン」から、事業者に求められる高年齢労働者対策の抜粋
https://www.mhlw.go.jp/content/001107783.pdf
これからの高齢者はスキルアップと健康を意識する
よく「少子高齢化だから現役世代が減って年金制度が破綻する。」という論調を目にします。
もちろん、今の制度がベストかどうかは議論すべきところですが、国として無策なわけではありません。現在は「現役世代」と呼ばれる層そのものを広げることで、制度維持を図っています。
国としては、労働力確保や社会保障制度維持の観点から、高齢者の就労機会を拡大する方向に政策を進めています。そのため、高齢者雇用を進める企業には助成金も用意されています。
一方で裏を返せば60歳以降も働くことが社会の前提になっていきます。60歳以降は働かない人に対する待遇が相対的に減っていく、ということにもつながります。この流れは変えられないでしょう。
しかし、人間の身体は今も昔も変わりません。
会社側がサポートするとは言っても、60歳という年齢において、労働は身体的にきついはずです。だからこそ、これから年金を受け取るかどうかという世代において重要なのは自身のスキルアップと健康ということになります。
40代、50代における職業スキルで満足せず、60代以降も社会で通用するだけの能力を磨き続けることが、今まで以上に大事になります。また、能力が高くなっても、それを活かせる健康状態がなければ宝の持ち腐れです。60代ともなると、それまでの健康への意識が身体に顕著に表れます。
平均寿命の伸びは人類の進化であり、喜ばしいことです。
それまで高齢者と呼ばれていた世代が当たり前のように働く時代になります。
それを生きづらくなったと嘆くのか、人生の選択肢が増えたと前向きに捉えるのか、それはあなた次第です。
第3号被保険者見直しの衝撃
先日、「主婦年金見直し」というニュースが世間を騒がせました。
今回、ご説明した高齢者の労働の流れと同様に、女性の労働参加もまた大きな時代の流れでもあります。
次回はいわゆる主婦年金、つまり「第3号被保険者」の制度の見直しや、そこに至る時代の流れについて解説をさせていただきます。
次回もお楽しみに!
執筆者プロフィール
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特定社会保険労務士
村田淳(むらたあつし)
ソフトウェア会社のコンサルタントを経て平成29年に開業。産業カウンセラーの資格を持ち、主に10人未満の企業を中心に、50社以上の顧問企業から、毎日のように労務相談を受けている。「縁を大事にする」がモットー。
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特定社会保険労務士
林良江(はやしよしえ)
板橋区役所年金業務に10年以上携わり、現在も同区資産調査専門員として勤務しながら、令和4年より障害年金を中心に事務所を開業。「ひまわりの花言葉;憧れ・崇拝・情熱」が自分のエネルギー源。

