2026(令和8)年度になりました。
皆さんが毎年のように変わる社会保険制度を調べることも大変だと思います。
今回は、2026(令和8)年度から変わる年金制度についてまとめてみました。
既に年金を受け取っている方にも、これから年金を受け取る方にも影響することなので、ぜひ知っておいてください。
この記事の目次
年金額の改定
年金額は毎年、マクロ経済スライド調整と呼ばれる金額の調整がされ、年度初めに改定が行われます。最初に改定された年金額を受け取れるのは4月分および5月分で、6月15日が年金支給日ということになります。
2026(令和8)年度の年金改定率は基礎年金が前年度に比較して1.9%アップ、厚生年金の報酬比例部分が2.0%アップとプラス改定となります。
年金の金額が上がることは受給者にとって喜ばしいことですが、昨今の物価高や現役世代の報酬アップを考えると、それが十分であるとは言えない方もいるかもしれません。
具体的には、満額の老齢基礎年金は1ヶ月あたり70,608円(年額:847,300円)となり、前年の69,308円から1,300円のプラスです。
また、標準的な老齢厚生年金の標準額は237,279円となり、前年の232,784円から4,495円のプラスとなります。
国民年金(老齢基礎年金(満額)
| 2025(令和7)年度 《月額》 |
2026(令和8)年度 《月額》 |
増加額 | |
|---|---|---|---|
| 新規裁定者満額 (1956年4月2日以後生まれ) |
69,308円 | 70,608円 | 1,300円 |
| 既裁定者満額 (1956年4月1日以前生まれ) |
69,108円 | 70,408円 | 1,300円 |
2026(令和8)年4月からの年金額改定(イメージ)
※厚生労働省:令和8月1月23日プレスリリースをもとに弊協会で作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001639615.pdf
これらの改定率は毎年議論をしてその都度決めるものではありません。
年金額を決めるルールがあって、それに基づくものです。
ルールをざっくりと説明すると、年金額とは原則、物価に比例します。
年金を受け取る側としては、そのお金で生活物資を買うわけなので、そうしないと生活できなくなり、当然です。
しかし、現役世代の賃金の伸びが物価の上昇に追いついていない場合、現役世代と年金受給者の購買力にずれが生じて、不公平です。
そのため、現役世代の賃金の伸びが物価高に足りない場合は、それだけ年金額も抑えられるように設計されています。
2026(令和8)年度はそのルールが適用されます。
※厚生労働省 「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」から抜粋
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001639615.pdf
在職老齢年金の支給停止調整額の引上げ
おそらく、2026(令和8)年度の一番大きい改定であり、目玉と言える施策になります。
在職老齢年金とは、働きながら受け取る「老齢厚生年金」について、一定以上の報酬がある場合に支給額が調整される仕組みです。
本来、年金とはリタイアした人の生活保障を目的とした制度です。しかし、高齢者の勤労意欲も高まる中、年金を受け取れる世代でも働く人が増えてきました。
そこで、年金を受け取れる世代なら在職の有無に関わらず年金を支給する反面、『もらいすぎ』になった場合は年金を調整してカットすることにしました。
この「もらいすぎ」になる金額とは、具体的には1ヶ月の老齢厚生年金と受け取っている報酬の総報酬月額相当額との合計となります。この基準を『支給停止調整額』と言います。
この『支給停止調整額』が2025(令和7)年度の51万円から、2026(令和8)年度は65万円と大幅増額となりました。
ここ数年、増額幅は1万円~2万円で推移していただけに、この大幅な増額は年金制度の方向転換と言えるでしょう。この見解は次回に改めてお話をさせていただきます。
例えば、厚生年金加入後40年間、上限の標準報酬月額65万円で推移したと仮定します。
ざっくりとした計算にはなりますが、年金月額の報酬比例部分(老齢基礎年金は含まれません。)は14万円程度になります。
つまり、65万円-14万円=51万円程度までは月額で報酬(お給料)を受け取っても在職老齢年金の上限にかからないことになります。
40年間、標準報酬月額65万円と言えば相当に高い給与を若いうちから受け取っていたことになりますが、それでいて、かつ、高齢者になっても月51万円の報酬に到達する方は一般的に限られると言えるでしょう。
◆在職老齢年金の支給停止調整額
| 2025(令和7) 年度 |
2026(令和8) 年度 |
|
|---|---|---|
| 支給停止 調整額 |
51万円 | 65万円 |
国民年金保険料の改定
2026(令和8)年度から17,920円の引上げ(前年より+410円)となります。
2025(令和7)年度の国民年金の保険料は毎月17,510円でした。
こちらも毎年、賃金の変動に応じて改定されており、2027(令和9)年度にはさらに370円増の18,290円になることが決まっています。
◆【国民年金保険料の金額】
| 2026(令和8)年度 | 2027(令和9)年度 | |
|---|---|---|
| 法律に規定された保険料額 (2004(平成16)年度水準) |
17,000円 | 17,000円 |
| 実際の保険料額 *( )は前年度との差額 |
17,920円(+410円) ※2024(令和6)年度は17,510円 |
18,290円(+370円) |
各種給付金額の引上げ
老齢年金生活者への支援給付金や、障害者への給付金など、年金以外にも様々な国の給付の仕組みがあります。こちらも物価変動に合わせて金額の引上げがあります。既にこれらの給付を受け取っている方はこちらに当てはまりますので、ご確認ください。
※厚生労働省 「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」から抜粋
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001639615.pdf
ひと目でわかる「2026(令和8)年度 年金額改定一覧表」
本年度の年金改正に伴い、その内容をコンパクトに一覧表にまとめました。
改定後の年金額(老齢・遺族・障害)はもちろんのこと、物価変動に応じた改定ルールがある児童扶養手当等の金額も掲載しています。
本紙(PDF)を印刷し、お手元にてご活用いただければ幸いです。
年金に頼らない人生設計
厳しい言い方になりますが、日本の年金制度というのは、年金だけで暮らしていくことを想定していません。
北欧諸国などの高負担高福祉の制度と違い、『中負担中福祉』、つまり、年金と自助努力のバランスで老後の生活が決まるように設計されていると言っても良いでしょう。
ましてや少子高齢化や平均寿命の増加など、年金制度から見れば負担の高い時代はもう来ています。もちろん、国としてはそれでも工夫をして年金制度が少しでも手厚くなるように頑張ってほしいのですが、我々国民にも、同じだけの自助努力が求められています。制度を正しく理解した上で、自身の働き方や資産形成を考えることが、これからの時代にはますます重要になります。
次回は年金制度の改正に込められたメッセージを深掘りしていきたいと思います。
お楽しみに!
執筆者プロフィール
-

特定社会保険労務士
村田淳(むらたあつし)
ソフトウェア会社のコンサルタントを経て平成29年に開業。産業カウンセラーの資格を持ち、主に10人未満の企業を中心に、50社以上の顧問企業から、毎日のように労務相談を受けている。「縁を大事にする」がモットー。
-

特定社会保険労務士
林良江(はやしよしえ)
板橋区役所年金業務に10年以上携わり、現在も同区資産調査専門員として勤務しながら、令和4年より障害年金を中心に事務所を開業。「ひまわりの花言葉;憧れ・崇拝・情熱」が自分のエネルギー源。

