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ここまで、年金改定の歴史における時代の変化について解説をさせていただきました。 今回は、大きく変化した女性の就労に関する変化についてお話をさせていただきます。

女性の就業率は上がっている

このコラムを書いている今日現在、日本は総理大臣も財務大臣も労働組合連合の代表もすべて女性が担っています。
そこに時代の流れを感じる方は少なくないはずです。
皆さんの肌感覚としても、女性の社会進出が進んでいると感じているのではないでしょうか。

1985(昭和60)年の段階で日本の全労働人口(満15歳以上の人口のうち、実際に仕事をしている就業者と仕事を探していてすぐに働ける状態になる「完全失業者」を合わせた人口)のうち、女性の割合は39.7%だったところ、2024(令和6)年には45%まで上がりました。
この間の男性の労働人口の伸びは約200万人に対して、女性は約750万人となります。
ここからも女性の社会進出が進んでいることがうかがえます。

厚生労働省ホームページより抜粋:労働力人口及び労働力人口総数に占める女性割合の推移

※上記は厚生労働省ホームページより抜粋(資料出所は総務省「労働力調査」)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/24-01.pdf

一方で今の年金制度の原型は1985(昭和60)年にできたと言ってもいいでしょう。
基礎年金制度第3号被保険者制度がこの年の改正でスタートしています。
この時代、労働者たる夫が稼ぎ、無業の妻が家庭を守るいわゆる専業主婦世帯は57%(2023(令和5)年は25%)と多数派であり、このような世帯を一番の念頭に置いた制度になっています。

もちろん、これまでも時代の流れを踏まえた改正は行われていますが、当時の制度改正から40年、つまり年金世代が一回りしたところで、さらにその流れが加速していると言えるでしょう。

第3号被保険者に対する評価

先日、「国民年金第3号被保険者の縮小」について報道がありました。
これは与党の『社会保障制度改革』に向けた実務者協議の中で、第3号被保険者制度の縮小の方向性が決まったということで、将来の制度改革に大きな影響を与える可能性が高いものの、まだ具体的な要件が決まったわけではありません。

社会保障費が膨らむこの日本において、広くその原資を徴収したいという政府の本音が透けて見えますが、一方で第3号被保険者制度が不公平である、という意見は以前からありました。

「第3号被保険者」とは、20歳以上60歳未満の国内居住者である厚生年金被保険者の配偶者のうち、その収入によって生計を維持されている人をいいます。
ただし、65歳以上の老齢基礎年金等を受ける権利を有している方を除きます。

第3号被保険者となると、ご自身は国民年金保険料を支払っていませんが、年金加入期間に算入されます。第3号被保険者の性別の要件はありませんが、実際は約98%が女性となっています。

1985(昭和60)年の年金制度改正前、専業主婦の年金加入は「任意」でした。
逆に言えば、無業で夫を支える女性は年金を受け取る権利さえも確立されていなかったことになります。その意味で「第3号被保険者制度」の創設は、女性の老後の安定に寄与するためのものであり、家族の一員としてのみの存在から、一人の個人としての存在への進化の過程であったと言えます。

当時は画期的な制度であり、女性の生活安定に寄与したことは間違いありません。
しかし冒頭にも書いたように国のトップが女性である時代において、女性が社会を支える一人の個人である、という意識はもはや当たり前となりました。
そうなると、就業意識にも変化が見られ、「子どもができてもずっと職業を続ける方が良い」と考える男女の割合はどの年齢階層でも増えてきました。
むしろ女性の方が職業を続けたい、という意識が多いという傾向が出ています。

厚生労働省「第3号被保険者制度について」から抜粋

※厚生労働省「第3号被保険者制度について」から抜粋
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001174760.pdf

ここに男性の育児参加の広がりも、こうした流れを後押ししています。
様々な育児休業に関する法律の改正により、就業にあたってネックとなっていた子どもの世話を男性側が担えるようになりました。
よって、女性の社会進出がより容易になりました。

そうなると、第3号被保険者の存在意義がもはや薄れてきたというのが時代の流れです。
ただ、そうは言っても、今、20%前後ある専業主婦世帯を切り捨てるようなことはしないと思いますが、これから社会に出てくる世代にとっては、第3号被保険者のような制度は縁遠いものになるでしょう。

遺族年金にも見られる意識の移り変わり

女性の社会進出の変化は「遺族年金」にも影響をしています。昨年、遺族厚生年金の男女差の見直しが話題になりました。
その時の解説がこちらです。

※『遺族厚生年金』改正を学ぶ~「どのようなもの」で「どのような影響」があるのか~
https://www.kurassist.jp/kurassist-eye/nenkin/learn-vol42-20250915.html

具体的な案はまだ出ていないものの、確実に今後行われるのは「中高齢寡婦加算の見直し」です。2028(令和10)年4月1日以降に発生する中高齢寡婦加算額は2053(令和35)年にかけて段階的に縮小されることになっています。

「中高齢寡婦加算」とは、

夫と死別時に40歳以上65歳未満であって、18歳到達年度の末日までの子のない妻

夫と死別時に18歳年度末までの子がある妻で、遺族基礎年金の支給終了時に40歳以上65歳未満であるもの

に対する遺族厚生年金に『上乗せ』して支給されるものです。

2026(令和8)年度の加算額は年額635,500円(月平均52,900円)です。
要は夫に養われていたという前提で、夫との死別でかつ、年金受給前の妻を支える制度と言えます。もっとも、夫側には同様の制度はなく、不平等とも言えます。
男女格差の解消もこの先進んでいくことになります。

ただし、施行日前に発生した「中高齢寡婦加算額」は縮小の対象になりません。
また、元から対象外となる方は、特に見直しの影響を受けないことになります。
そして、一度受け取った加算額は減額されることなく、65歳になるまで受け取ることができます。
こちらも、長い目で見れば専業主婦世帯に向けた制度が大きく変わるものですが、直近の影響は少ないとも言えるでしょう。

どこにどれくらい影響するのか確認をする

男女雇用機会均等法ができて40年を経過しました。
今の現役世代はほとんどの方が段階に差はあれ、男女平等を前提とした社会に生きてきたことになります。
もちろん実態としてどうだったか、というところは個人ごとに差はあるでしょう。
しかし、40年前に比べれば、全体的に男女平等が浸透したことに疑う余地はありません。今後も年金制度に限らず、男女差を前提とした制度は縮小していく流れになると思われます。

ただし、年金制度の改正は長い経過措置を設けながら進められることが一般的です。
ニュースを見て不安になったときは、まずご自身にどの程度影響があるのかを確認することが大切です。

くらしすと「年金」ワンコイン質問箱

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