このコラムでは主に公的年金制度を中心に解説をしてきました。
ここで一つ確実に言えることがあります。
「公的年金だけでは老後を十分に支えることは難しい」ということです。
あくまで年金は生活の基盤にはなりますが、ゆとりある生活を送るには十分とは言えません。
今回は、公的年金以外の老後資金として、近年、注目されているiDeCoやNISA、企業年金について解説します。
公的年金だけでは不安だとお考えの方は、ぜひ、本コラムをお読み頂き、将来の不安解消の一助として頂ければ幸いです。
重要度を増す3階部分の年金
年金は『3階建て』と言われることがあります。
2階までが公的年金、つまり要件に合えば公的には強制的に加入しなければいけないものであるのに対し、3階はほぼ「任意加入」です。
しかし、老後の豊かな人生を支えるうえで大事な柱でもあります。
老後になってからだともう遅い、今から少しでもこの3階部分に注目していきましょう。
どれも公的年金以外に受給できるものである
まず以前から厚生年金に上乗せされる年金として存在していたのが『厚生年金基金』です。
これは企業や業界で基金を作り、国に代わって老齢厚生年金の一部を給付し、それに独自の上乗せ給付を行う制度でした。かつての日本の終身雇用を支える制度として機能してきました。
ただし、低成長時代を迎えて基金の収益が悪化したため、2014(平成26)年から新たな厚生年金基金の設立ができなくなりました。現在の加入率は僅か0.2%程度にすぎず、いずれなくなっていきます。
同じく3階建て部分として機能していたのが『確定給付型企業年金(DB)』です。
難しく聞こえるかもしれませんが、退職金制度の一つで、退職金を年金形式で受け取る仕組みだと考えるとイメージしやすいでしょう。
最初から受け取れる金額が決まっているから『確定給付』と名前が付きます。
こちらも運用の負担が大きいことから確定給付型の退職年金制度を続ける会社は減る傾向にあります。
また、これらの3階建て部分はどちらも第2号被保険者、つまり被雇用者のためのものです。第1号被保険者にあたる自営業者は加入できません。
多くの第1号被保険者が利用できる制度として『付加年金』と呼ばれるものがあります。
掛け金が月400円で、上乗せ額が200円×納付月数/年となるものです。
ハイパフォーマンスではありますが、年金に与えるインパクトはそこまで大きくなりません。第2号被保険者以上に自助努力による老後の資産形成が求められます。
自己責任による年金制度の誕生
ここまでが、かつての年金上乗せのメインストリーム(主流)でした。
しかし、日本は低成長時代を迎え、国や企業が運用で老後の生活を支えることに限界がきてしまいました。
さらに年金を受け取る世代が増えることで社会保障費が増大し、年金制度は方向性の転換を迫られています。
そこで、自分で資産の運用を奨励する制度が生まれました。
キーワードは自己責任です。
年金の上乗せは任意ですので、それをしてもしなくても構いません。
3階建て部分の構築の成功については国も会社も約束しないから自分で作ってください、でもそれをしたいというなら課税上などの優遇をするよ、ということです。
一見すると責任の放棄みたいに聞こえるかもしれませんが、そもそも3階部分の加入が任意であることを考えると、割と合理的な制度でもあります。
いくつか種類はありますが、自己責任であるというところは本質的に変わりません。
まずはiDeCo(イデコ)がまさにその代表格です。
毎月自分で決めた金額を積み立てて、運用方法を自分で決めます。
原則60歳以降にならないと受け取ることはできませんが、課税上の所得控除が受けられ、運用益の課税が無いという大きなメリットがあります。
似たような制度でNISA(ニーサ)があります。
こちらも最近、名前として浸透してきたので聞いたことがあると思います。
こちらも自分で運用を決められること、運用益の課税が無いというところがiDeCoと同じです。
いつでも引き出すことが可能なので、年金の上乗せというよりは国民の投資による資産形成を支援することが大きな目的とする制度になります。iDeCoには積立額に上限がありますので、NISAを使ってさらに老後の資金増加を狙う、ということは可能です。
会社員の3階建て部分として企業型確定拠出年金(DC)があります。
企業としてこの制度に加入することで、iDeCoのように社員が運用をしながら年金を増やすことが可能になります。
掛け金は原則会社が負担するので、社員から見れば退職金に近い制度と言えます。
もっとも年金制度なので、原則60歳にならないと引き出すことができません。
先に説明をしたDBが、給付金額が決まっているから「確定給付」というのに対し、引き出す時の給付金額は決まっていないけど、毎月拠出する金額は決まっているから「確定拠出」という言い方をします。
iDeCo、Nisa、企業型DCの歴史
これらの制度が横文字で馴染みにくいものなので、敬遠される方がいるのも無理はありません。確かにこれらの制度は、複雑にしようとすればできるものです。
ただ、同時にシンプルに捉えることも可能です。
皆さんの老後を支える大切な知識なので、食わず嫌いにならずに一度トライしてほしいと思います。
やらないことも自己責任
iDeCoやNISAを語るときについて回るのが、何度か出てきた「自己責任」という言葉です。これをもって躊躇してしまう人も多いようです。
確かに自己責任であることは間違いありません。
しかし、同時に「やらなかった」結果、持っていたお金の価値が低くなり、将来に困窮するのもまた自己責任です。
個人的には、やるかやらないにかかわらず、自己責任でない世界など無いと思っています。
そもそも、お金の価値というのは時を経て目減りします。
昔は500円で食べられていたランチが今500円で食べられないのは、500円というお金の価値が受け取る側から見て減ったからです。
真水も放っておけば蒸発するように、お金もインフレによって価値が少しずつ目減りしていきます。
もちろん、現金として今そこにある、ということがメリットになることもあります。
このコラムの目的はこれらの制度の任意加入を勧めることではありません。
ただ、これらの制度について回る「食わず嫌い」な心理的障壁は取り去ったうえで、皆さんがフラットに加入する・しないを判断してほしいと考えています。
次回以降、これらの制度について、一つずつ深掘りしていきます。
次回はiDeCoについて解説をします。
お楽しみに!
執筆者プロフィール
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特定社会保険労務士
村田淳(むらたあつし)
ソフトウェア会社のコンサルタントを経て平成29年に開業。産業カウンセラーの資格を持ち、主に10人未満の企業を中心に、50社以上の顧問企業から、毎日のように労務相談を受けている。「縁を大事にする」がモットー。
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特定社会保険労務士
林良江(はやしよしえ)
板橋区役所年金業務に10年以上携わり、現在も同区資産調査専門員として勤務しながら、令和4年より障害年金を中心に事務所を開業。「ひまわりの花言葉;憧れ・崇拝・情熱」が自分のエネルギー源。

