障害年金の「障害」とは?

前回は「どのような方が障害年金を受け取れるか」、という話をさせていただきました。
今回は「どんな病気で」障害年金を受け取れるか、について解説をします。

そもそも、障害年金における「障害」とは、どういうことでしょうか。厚生労働省のホームページ(HP)には「病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合」と表現されています。
つまり、一般的に認知されている身体の障害のほか、長期療養が必要なガンや糖尿病などの外部疾患、統合失調病などの精神疾患も含まれます。

でも、現在は「病気やけがで生活や仕事が制限されるように」なっていても、治るかどうか、あるいは将来的にも続くかどうかなんてわからない場合もありますよね。
だから、継続的に支給される障害年金とイメージが結びつかない方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、そのために障害年金には判断基準があるのです。
今、何かしらの理由で働きづらいと思っていらっしゃる方は、それが快方に向かっているか否かにかかわらず、障害年金の受給を検討していただきたいです。

障害の程度ってどのように決まるの?

まず原則です。
前回のコラム障害年金の対象となるには等級として1級または2級(障害厚生年金は3級も可)であることが必要だとご説明しました。
では、具体的にその等級はどのように決まるのでしょうか。

実は、厚生労働省のホームページ(HP)にその等級の基準が詳細に表示されています。


全部で134ページもあって、普通の方が通読するには難しいくらいボリュームがあります。原則はこの表に基づいて決まることになります。

なお、この表はあくまで障害年金の受給のための認定基準であり、いわゆる障害者手帳を交付される際の等級とは一致しない、ということもご注意ください。

原則は認定基準による判断

例を見てみましょう。
下図は眼の障害に関する認定基準となります。ちなみに、この基準は令和4年1月に改正されました。

認定基準
眼の障害については、次のとおりである。

令別表 障害の程度 障害の状態
国年令別表 1級 両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの
一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの
ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
2級 両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの
一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの
ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のI/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつI/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

※「《障害認定基準》(PDF:12MB)」から抜粋

ちなみに、1級の状態である視力0.03以下というのは、赤ちゃんが生まれたばかりのときの視力に近いそうです。人が初めて光を浴びたときの視力に近いと言えば、その程度を想像できるでしょうか。

このような表を含む節が全部で19あります。そのどれかにあたる時に、上記の表にしたがって等級が認定されます。
なお、障害厚生年金を受け取れる場合、障害厚生年金と障害基礎年金は同じ等級となります。障害厚生年金のみを受け取れる3級や、3級より低いけど一時的に受け取れる障害手当金にも同様の表があります。

また、障害年金には併合認定という仕組みがあります。
一つ一つの障害等級は高くなくても、複数の障害を同時に負っているような場合は併合認定されて等級が上がります。

例えば、「視力が良い方で0.1以下」は3級、「親指および人差し指を併せて上肢の4指を廃した」場合も3級、です。
しかし、両方が同時に起きているような場合は併合認定されて2級となります。
事故により同時に障害を負うケースもあれば、障害が悪化して別の箇所に影響を及ぼすケースもあるでしょう。ご自身の障害と思われる箇所はすべて検討されるとご認識ください。

併合認定もその認定基準(PDF:145KB)が公表されておりますので、ご参照ください。

精神障害の場合の判断基準

まず前提として、いわゆるうつ病や統合失調症などの精神障害も障害年金の対象として認められるケースがあります。
ところが、どのような状況だと障害年金が認められるのか、判断が難しいと言わざるを得ません。

例として、統合失調症や感情障害のケースの認定表は以下の通りです。

A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害
(1) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである

障害の程度 障害の状態
1級
1 統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの
2 気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの
2級
1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの
2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級
1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの
2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

※「《障害認定基準》(PDF:12MB)」から抜粋

文章が多くて読むのが大変ですね。
先に見せた眼の障害の例よりも、基準が曖昧なようにも見えます。そこで大事なのは、各文の最後の一節です。

1級は「常時の援助が必要なもの」、2級は「日常生活が著しい制限を受けるもの」、3級は「労働が制限を受けるもの」とあります。
この等級に値するかどうかを、障害年金の申請の際に提出する診断書や年金の請求にかかる各種書類から判断することになります。

特に大事になるのが、障害年金所定の診断書と病歴・就労状況等申立書にある「就労状況」「日常生活状況」の記載欄です。この両者の記載の整合性が取れていることが重要です。そのため、日常生活で援助が必要なこと、制限を受けていることを、主治医に明確に伝えてください。特にこの箇所は「単身で生活をする」ことが前提となりますので、主治医にも「単身で生活をする」場合を想定して診断書を書くように注意を促しましょう。

障害年金所定の診断書の日常生活状況
※障害年金所定の診断書の「「日常生活状況」記載欄(PDF:4.66MB)」から抜粋

病歴・就労状況等申立書の「就労状況」「日常生活状況」
※病歴・就労状況等申立書の「「就労状況」「日常生活状況」記載欄(PDF:2.05MB)」から抜粋

目に見える身体障害と違い、精神の障害は判断が難しいのですが、要は「生活が一人でできる状態か」「仕事ができる状態か」という点が問われているとご認識ください。

精神障害について社会の認知に変化あり

以前と比べ、近年はうつ病などの精神障害に関する問い合わせが増えています。
これは社会が複雑化した背景と同時に、そのような精神障害が一般的なものとして社会に認知されてきたとも言えます。皆さんの周りでも「うつ病」「統合失調症」といった言葉を聞く機会は増えたのではないでしょうか。

そのような社会背景の中で、障害年金の受給可否を審査する側もその影響を全く受けないということは無いでしょう。時代の流れは変わってきています。

また、障害年金は診断書や請求書の書き方や添付書類の追加などで、可能性は高くないものの、一度認められなかったものが審査請求などで認められることもあります。

障害に「似たような」症状はあっても「同じ」症状はありません。
それぞれの方が、それぞれの時代に、それぞれの事情を抱えています。周りの情報に流されず、障害年金の受給が必要であれば、納得いくまで申請をしてみてはいかがでしょうか。

【障害年金】についてもう少し学びたい方はこちらをご参照ください

- 次回予告 -

『障害年金』を学ぶ③
~障害年金の金額について~

次回、くらしすとEYEの年金を学ぶ【第11回】では、
"『障害年金』を学ぶ③ ~障害年金の金額について~"
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