年金講座

筆者プロフィール 長沼 明(ながぬま あきら)

志木市議・埼玉県議を務めたのち、2005年からは志木市長を2期8年間務める。日本年金機構設立委員会委員、社会保障審議会日本年金機構評価部会委員も歴任し、社会保険労務士の資格を有する。2007年に明治大学経営学部特別招聘教授に就任後、現職。主な著書・論文に『年金一元化で厚生年金と共済年金はどうなる?』(2015年、年友企画)、『被用者年金制度一元化の概要と制度的差異の解消について』(「浦和論叢」2015年2月号第52号 浦和大学・浦和大学短期大学部)

 10月1日の一元化の施行日まで、あと3ヶ月あまりとなりました。
 年金事務所や金融機関では、厚生年金と共済年金の加入期間があるという妻から、次のような相談が寄せられてきます。「私がこのまま厚生年金に加入して働いていると、現在加入している厚生年金の加入期間と昔加入していた共済組合の加入期間とを合計して20年以上になりますが、そうすると夫に加算されている加給年金額は支給停止になるのですか?」という相談です。
 政令がまだ出されていないので、確定的に述べられない事項はありますが、わかっている範囲内で、加給年金額について、事例をあげながら説明していきます。

加給年金額の加算の時期(原則的な事例)
〜共済年金と厚生年金の加入期間が合算して20年ある、年上の妻が、一元化後に、65歳となり、加給年金額が加算される場合〜

 これも原則的な事例です。加給年金額が加算される場合の、基本型です。
 共済年金と厚生年金に加入する期間が20年以上ある年上の妻が65歳になったら、加給年金額はどうなるのか、を事例でみていきましょう。

ケーススタディ

◆B夫婦の年金データ(生計維持関係あり)

-年齢は、平成27年6月1日現在のもの-

■ 妻(昭和29年5月31日生まれ、現在61歳、無職)
共済年金(市役所勤務)13年、厚生年金7年、国民年金15年加入。
受給権発生は、60歳(平成26年5月)。

■ 夫(昭和35年11月30日生まれ、現在54歳、自営業)
共済年金(市役所勤務)10年、国民年金20年加入(現在も加入)。
受給権発生は、64歳(平成36年11月)。

 【図2】の〈夫の年金支給図〉と〈妻の年金支給図〉をご覧ください。
 妻は、平成26年5月に60歳となり、特別支給の老齢厚生年金が、そして平成27年5月には61歳となり、特別支給の退職共済年金の受給権が発生しています。

 この妻が、平成31年5月に65歳になったとき、一定の要件を満たす配偶者(この事例の場合は夫)がいる場合、被用者年金(厚生年金と共済年金)に240月以上加入しているということで、加給年金額は加算されるのでしょうか?
 それとも、一元化前に、妻自身の報酬比例部分(地方公務員共済年金の場合は、給料比例部分)の受給権が発生しているということで、加給年金額は発生しないということになるのでしょうか?

 B夫婦の場合、本来の老齢厚生年金の受給権発生日(65歳到達時点)が、一元化の施行日後であるため、改正後の規定を適用して加給年金額の判定を行いますので、加給年金額が加算されます(一元化後の厚生年金保険法第78条の27)。

加給年金額を支給するのは、日本年金機構? 共済組合?

 なお、【加給年金額の加算の基準】については、次のように、政令で規定される見込みです。
 2以上の種別の被保険者であった期間を有する者の加給年金額の加算については、次の基準に基づき加算する見込みです。
 ①加給年金額の加算開始が最も早い年金に加算する。
 ②同時の場合は、加入期間が長い年金に加算する。
 ③加入期間の長さも同じ場合は、1号厚年・2号厚年・3号厚年・4号厚年の順に加算する。
 従って、B夫婦の妻の場合、②に該当しますので、加給年金額は加入期間が長い厚生年金(3号厚年:共済年金)に加算され、地方公務員共済組合から支給されるということになります(見込み、政令で規定される見込みです)。

妻に支給される加給年金額はいつまでか?

 B夫婦の妻に加算された加給年金額は、夫が65歳に達する(平成37年11月)まで、支給されます。この夫が65歳になったときに、この夫には振替加算が支給されます(平成27年度の年金額で20,900円)。
 なお、この夫が、市役所に20年勤務していた場合は、妻に加算された加給年金額は、夫が64歳に達する(平成36年11月)までとなり、平成36年12月分から支給停止となります。夫に、20年以上加入した特別支給の老齢厚生年金(3号厚年期間)の受給権が発生し、加給年金額の加算要件を満たすことになったからです。

【図2】B夫婦の場合

図表2 B夫婦の場合
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