一家の大黒柱が亡くなったとき、悲しみに明け暮れた後に訪れるのは生活への不安です。
その人がいることによって入ってくるお金が無くなるわけなので、無理はありません。

今回から複数(全5回)に分けて、人が亡くなったときに家族に支給される遺族年金について解説をさせていただきます。

第一回目は「誰が遺族年金をもらえるの?」という話です。

身近な方が亡くなるなんて、滅多にありません。
しかし、それは家族があれば、遅かれ早かれ、いつかはやってくるのも事実です。
遺族年金のことを知り、その日のために備え、亡くなった後も安心して過ごす、それこそが故人の方の望むところではないでしょうか。

「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」

遺族年金を知るためには、まず公的年金の仕組みを知る必要があります。
公的年金はよく2階建て(*)の家のように表現されます。
遺族年金も老齢年金障害年金と同じく、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」といわば2階建ての構造です。
「遺族基礎年金」は国民年金加入者、つまり国民ほぼ全員が対象ですが、「遺族厚生年金」は厚生年金加入者や過去に厚生年金に加入されていた方が要件を満たすことで対象となります。

(*)2階建て‥‥

日本の公的年金制度は「2階建て」の構造です。
1階は20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」、2階は会社員や公務員が加入する「厚生年金」です。

「遺族基礎年金」は子どものためのもの

では、「遺族基礎年金」から見ていきましょう。
遺族基礎年金は以下の2つの要件どちらかに該当している必要があります。

「遺族基礎年金」の受給者

  • 子のある配偶者

つまり、「遺族基礎年金」の支給は子どもがいることが前提なのです。

遺族基礎年金の受給者

なお、上記の「配偶者」「子」とは、亡くなった方に”生計を維持されていた”ことを要件とします。 さらに、「子」とは18歳到達年度の末日までにある子(つまり高校卒業の年齢まで)または障害状態にある場合は20歳未満の子を指します。

ちょっと深堀りしましょう。
「生計を維持されている」とは、どのような状況を指すのでしょうか。
これは以下の2つの要件をいずれも満たす場合を言います。

  • 生計を同じくしていること。(同居していること。たとえ別居していても、仕送りをしている・健康保険の扶養親族である等の事項があれば認められます。)
  • 受給する方が収入要件を満たしていること。(前年の収入が850万円未満であること。または所得が655万5千円未満であること。)

簡単に言えば、「亡くなった方と同居もしくは仕送りを受けている別居状態であって、その人に著しく高い収入はない」という場合が“生計を維持されている”と言えます。

仮に夫婦の収入に差があり、収入の低い方が亡くなった場合、生計を維持されているという要件に合えば、収入の高い方の子のある配偶者は「遺族基礎年金」を受け取れます。
被扶養の概念とは考え方が違いますので、ご注意ください。

扶養の概念

「遺族基礎年金」は子のためのもの、と言われてびっくりした方もいるかもしれません。
しかしながら、専業主婦(夫)の方で配偶者が亡くなってしまうと、子どもがいない場合には、自身の生活を直撃することになりかねません。
そのため、このような制度になっています。

どうする年金?

離婚した夫が亡くなったときは、遺族年金はもらえるの?

「子」にとっては母親が離婚しても父であることは変わりがないので、「子」は遺族年金をもらえる遺族になります。
ただし、年金には「生活維持要件」が必要です。離婚後に養育費を受け取る等の経済的援助があった場合は、その要件をみたしていることになり、年金を受け取ることができます。
また、「遺族基礎年金」では、生計を同じくする母がいる場合、子の年金は支給停止されます。
そのため、生計を同じくする母がいなくなる、例えば、子を亡父の両親が引き取るのようなケースでは支給停止が解除され、子は「遺族基礎年金」を受け取ることができます。

「遺族厚生年金」は扶養されている配偶者等のためのもの

では、次に「遺族厚生年金」を受け取れる方について、見ていきましょう。

「亡くなった方に生計を維持されていた」という要件は「遺族基礎年金」と同じです。
その要件を満たす方で最も優先順位が高い方が受け取れます。
また、こちらは子どもの有無に関係なく、妻が優先されます。

「遺族厚生年金」の優先順位

  • 父母
  • 祖父母

番号が若いほど、優先順位が高く、先順位の方がいれば後順位の方は「遺族厚生年金」をもらうことはできないというルールです。

そして、それぞれに年齢などの要件がつきます。

  • 妻は、本人死亡時点で子のない30歳未満の場合、5年間のみ受給できる
  • 子および孫は18歳になった年度の3月31日までにあるか、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方
  • 夫、父母、祖父母は本人死亡当時に55歳以上である方

ただし、夫、父母、祖父母の受給開始は60歳(「遺族基礎年金」をあわせて受給できる夫の場合に限り55歳)です。

言葉では少しわかりにくいと思います。
そのため、下図の【遺族の優先順位】をご覧ください。
子がいる場合は、「遺族厚生年金」の対象となる親が優先されます。
なお、子のある妻または子のある55歳以上の夫が「遺族厚生年金」を受け取っている間は、子には遺族厚生年金は支給されません。

そして、次の順位にある子のない妻も遺族厚生年金は支給されます。
ここが「遺族基礎年金」と違うところです。

遺族の優先順位

遺族の優先順位

日本年金機構HPから抜粋

「遺族基礎年金」や「遺族厚生年金」の他に、寡婦年金死亡一時金という制度もあります。
それは次の機会にお話しします。

どうする年金?

遺族年金は、再婚したらもらえなくなるの?

配偶者(夫・妻)の失権事由は
①死亡したとき ②結婚したとき になります。
そのため、配偶者が婚姻した場合には遺族年金は失権します。
婚姻には事実上の婚姻も含めますので、たとえ入籍していなくても夫婦と同様の関係を有し共同生活を送っている場合は、遺族年金は終了します。
なお、遺族として妻と同順位にある「子」は、妻の再婚相手と養子縁組をすれば失権しません。ただし、「遺族基礎年金」は生計を同じくする 父・母がいるときは支給停止されます。一方、「遺族厚生年金」は、同居の父・母がいても、そのままもらい続けることができます。

遺族年金には様々な支給要件がある

「遺族基礎年金」、「遺族厚生年金」ともに言えることですが、このように受け取る方に要件が細かくつく理由は、 この年金があくまで、大黒柱の死亡というアクシデントから生活を一時的に支えるものという前提になっているためです。

例えば成長した子は自分で稼ぐことができますし、若い奥様なら社会に出て働くこともできるはずです。 限られた年金資源を不公平感なく配分するために決められているとご理解ください。

人によっては、実は対象ではなかったり、一定の年齢にならないと受け取れなかったりします。 そのため、生計を支えている方が突然亡くなることも想定して、生命保険など備えをしておくことが大事になります。 あまり考えたくないことですが、考えた先に本当の安心が生まれるのです。

次回は「どんなときに遺族年金をもらえるの?」です。
え、亡くなったらもらえるんじゃないの? いえいえ、亡くなった方にも遺族年金を受け取れる条件があるんです。

- 次回予告 -

「遺族年金」を学ぶ②
~どんなときに遺族年金をもらえるの?~

次回、くらしすとEYEの年金を学ぶ【第16回】では、
"「遺族年金」を学ぶ② ~どんなときに遺族年金をもらえるの?~"
を更新予定でございます。
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