

雇用保険と年金
質問高齢者雇用継続給付とそれに伴う老齢厚生年金の分岐点はどこか計算してみましょう
高年齢雇用継続給付
60歳以上65歳未満の人(雇用保険被保険者)の各月の給与(賞与は含まない)が60歳時の給与に比べて75%未満に低下した場合、低下率に応じて給付金が支給されます(上限は給料の15%)。なお、原則的に毎年8月1日から支給限度額が代わります。2022(令和4)年4月現在は、各月の給料が360,584円以上ある場合は支給されません。
高年齢雇用継続給付と老齢厚生年金
高齢者雇用継続給付を受ける人は、その給料に対する支給率に応じて老齢厚生年金の額が一部支給停止になります。
現在の給料の 60歳時の給料に 対する割合 |
高年齢雇用継続給付の 60歳以降(現在)の 賃金に対する支給率 |
特別支給の老齢厚生 年金の支給停止割合 (賃金(標準報酬月額)に対して) |
75% | 0.00% | 0.00% |
74% | 0.88% | 0.35% |
73% | 1.79% | 0.72% |
72% | 2.72% | 1.09% |
71% | 3.68% | 1.47% |
70% | 4.67% | 1.87% |
69% | 5.68% | 2.27% |
68% | 6.73% | 2.69% |
67% | 7.80% | 3.12% |
66% | 8.91% | 3.56% |
65% | 10.05% | 4.02% |
64% | 11.23% | 4.49% |
63% | 12.45% | 4.98% |
62% | 13.70% | 5.48% |
61%以下 | 15.00% | 6.00% |
実際にどのくらいの給料に対してどれくらいの額の年金額が支給停止になるか計算してみましょう。また、注意したいのは、この場合は在職老齢年金となりますから、その分の支給停止が別に計算されるということです。

降給に伴う高年齢雇用継続給付の支給額と年金額の支給停止額
〈例〉Aさん(会社員・60歳・男性)の場合
現在の給料は月額50万円とします。61歳からも継続雇用する予定ですが、その場合給料が下がることが想定されます。高年齢雇用継続給付はどれくらい支給され、その分年金はどれくらい下がるのでしょうか(特別支給の老齢厚生年金額を120万円(基本月額10万円)とします)。
60歳からの 給料月額 |
60歳時の給料に 対する割合 |
高年齢雇用継続 給付 |
年金の 支給停止額 |
給料+高年齢雇用継続給付+特別支給の 老齢厚生年金※ |
500,000円 | 100% | 0円 | 0円 | 600,000円 |
450,000円 | 90% | 0円 | 0円 | 550,000円 |
400,000円 | 80% | 0円 | 0円 | 500,000円 |
375,000円 | 75% | 0円 | 0円 | 475,000円 |
370,000円 | 74% | 0円 | 0円 | 470,000円 |
365,000円 | 73% | 6,534円 | 2,628円 | 468,906円 |
360,000円 | 72% |
9,792円 |
3,924円 |
465,868円 |
355,000円 | 71% |
13,064円 |
5,219円 |
462,845円 |
350,000円 | 70% |
16,345円 |
6,545円 |
459,800円 |
300,000円 | 60% | 45,000円 | 18,000円 | 427,000円 |
250,000円 | 50% | 37,500円 | 15,600円 | 371,900円 |
200,000円 | 40% | 30,000円 | 12,000円 | 318,000円 |

在職老齢年金の支給停止は別計算
就労しながら特別支給の老齢厚生年金や65歳からの老齢厚生年金をもらっていると、年金額の一部が支給停止になりますが、さらに高年齢雇用継続給付を受けている場合は、両方の支給停止の計算が行われます。
〈例〉上記のAさんの場合
60歳からの 給料月額 |
60歳時の 給料に対する 割合 |
高年齢 雇用継続給付 |
高年齢雇用継続給付に係る年金の支給停止額 |
在職に係る年金の支給停止額 |
給料+高年齢雇用継続給付+特別支給の老齢厚生年金※ |
500,000円 |
100% |
0円 |
0円 |
65,000円 |
665,000円 |
450,000円 |
90% |
0円 |
0円 |
40,000円 |
640,000円 |
400,000円 |
80% |
0円 |
0円 |
15,000円 |
615,000円 |
375,000円 |
75% |
0円 |
0円 |
2,500円 |
602,500円 |
370,000円 |
74% |
0円 |
0円 |
0円 |
600,000円 |
365,000円 |
73% |
6,534円 |
2,628円 |
0円 |
600,000円 |
360,000円 |
72% |
9,792円 |
3,924円 |
0円 |
600,000円 |
355,000円 |
71% |
13,064円 |
5,219円 |
0円 |
600,000円 |
350,000円 |
70% |
16,345円 |
6,545円 |
0円 |
600,000円 |
300,000円 |
60% |
45,000円 |
18,000円 |
0円 |
600,000円 |
250,000円 |
50% |
37,500円 |
15,600円 |
0円 |
600,000円 |
200,000円 |
40% |
30,000円 |
12,000円 |
0円 |
600,000円 |
| 
特別支給の老齢厚生年金の 支給停止額合計 |

高年齢雇用継続給付の手続き
事業主を経由して、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に「高年齢雇用継続給付支給申請書」を提出します。高年齢雇用継続給付の支給を受けるためには、原則として2ヵ月に一度、支給申請書を提出する必要があります。初回は最初に支給を受けようとする支給対象月の初日から起算して4ヵ月以内に提出します。
【持参するもの】
□払渡希望金融機関指定届(高年齢雇用継続給付支給申請書についている)
□雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
□支給申請書と賃金証明書の記載内容を確認できる書類(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿
など)
□被保険者の年齢が確認できる書類等(運転免許証か住民票の写し(コピーも可))

年金事務所への手続き
高年齢雇用継続給付を受けるようになったときは、本人が年金事務所に「老齢厚生・退職共済年金受給権者 支給停止事由該当届」を提出します。
【持参するもの】
□高年齢雇用継続給付支給決定通知書
様式1 老齢厚生・退職共済年金受給権者 支給停止事由該当届
この記事はいかがでしたか?
ボタンを押して評価してください。