60歳で退職することになりました。年金は65歳からもらえるとのことですが、それまでの生活費が足りなくないか心配です。年金を前倒しでもらうことはできないでしょうか?(55歳・女性)

ピンポイント・アンサー
老齢年金を65歳より前にもらい始めることができる「繰上げ受給」という制度があります。
ただし、繰上げ受給をすると、繰り上げた分、年金額減額されます。一度減額された年金額は一生変わりませんので、注意が必要です。

老齢年金は原則として65歳から

一定期間以上年金に加入している人は、65歳から老齢年金を支給されます。

【通常の老齢年金を支給される年齢】

国民年金だけに加入している人(第1号被保険者第3号被保険者

65歳から 老齢基礎年金

厚生年金保険に加入している人(第2号被保険者

65歳から 老齢基礎年金 + 老齢厚生年金

2015(平成27)年9月以前に共済組合等に加入していた人(第2号被保険者)

65歳から 老齢基礎年金 + 退職共済年金(2015年9月までの加入期間分)
 + 老齢厚生年金(2015年10月以降の加入期間分)

※1961(昭和36)年4月1日以前生まれの男性、1966(昭和41)年4月1日以前生まれの女性は、 60~64歳で支給される「特別支給の老齢厚生(退職共済)年金」があります(支給開始年齢は生年月日によります)。(くわしくは「いくらもらえるの?②老齢厚生年金」参照)

ココがわからない!

「特別支給の老齢厚生年金」ってなに?

厚生年金保険(2015(平成27)年9月まで共済組合等も含める)に1年以上加入している1961(昭和36)年4月1日以前に生まれた男性、1966(昭和41)年4月1日以前に生まれた女性には、65歳になる前に支給される老齢年金があります。これを「特別支給の老齢厚生年金」といいます。受給開始年齢は、段階的に60歳から64歳に移行し、上記以後に生まれた人はすべて65歳から支給されることになります。
これは、受給開始年齢が60歳だった旧厚生年金保険法から現行法へ段階的な移行するための措置です。

65歳より早くもらいたい人は繰上げ受給

老齢年金は、手続きをすれば60歳から65歳になるまでの間に繰り上げることができます。ただし、年金額受給開始年齢に応じて減額されます。減額された年金額は一生変わりません。また、障害基礎年金寡婦年金は受けられなくなりますのでご注意ください。

【老齢基礎年金の支給開始年齢と減額率】

1962(昭和37)年4月1日以前生まれの人

年金の減額率=(繰上げ請求月~65歳になる前月までの月数)×0.5%

繰上げ請求月 減額率 受給率(本来の年金に対して)
60歳0ヵ月~11ヵ月 30.0~24.5% 70.0~75.5%
61歳0ヵ月~11ヵ月 24.0~18.5% 76.0~81.5%
62歳0ヵ月~11ヵ月 18.0~12.5% 82.0~87.5%
63歳0ヵ月~11ヵ月 12.0~6.5% 88.0~93.5%
64歳0ヵ月~11ヵ月 6.0~0.5% 94.0~99.5%

年金制度改正により、2022(令和4)年4月以降は1962(昭和37)年4月2日以降生まれの人を対象に、繰上げ受給の1ヵ月あたりの減額率が0.4%へ緩和されました。

1962(昭和37)年4月2日以降生まれの人

年金の減額率=(繰上げ請求月~65歳になる前月までの月数)×0.4%

繰上げ請求月 減額率 受給率(本来の年金に対して)
60歳0ヵ月~11ヵ月 24.0~19.6% 76.0~80.4%
61歳0ヵ月~11ヵ月 19.2~14.8% 80.8~85.2%
62歳0ヵ月~11ヵ月 14.4~10.0% 85.6~90.0%
63歳0ヵ月~11ヵ月 9.6~5.2% 90.4~94.8%
64歳0ヵ月~11ヵ月 4.8~0.4% 95.2~99.6%

〈例〉

  • 1965(昭和40)年4月2日以前生まれで、65歳から年額795,000円を受けられる人が60歳0ヵ月から受けることにすると…
  • ●減額率=24%(受給率76%)
  • ●795,000円×76%=604,200円 → 604,200円(生涯の年金額)
  • ※年金額は、50銭未満は切り捨て、50銭以上1円未満は1円に切り上げになります。

(2023(令和5)年度)

ココがわからない!

老齢厚生年金は繰り上げてもらえないの?

特別支給の老齢厚生年金が支給される人

(1953(昭和28)年4月2日~1961(昭和36)年4月1日生まれの男性、1958(昭和33)年4月2日~1966(昭和41)年4月1日生まれの女性):
→64歳までの特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を繰り上げることができます(60歳から受給開始年齢までの間)。(老齢基礎年金も同時に全額繰上げになります。)

特別支給の老齢厚生年金が支給されない人

(1961(昭和36)年4月2日以後生まれの男性、1966(昭和41)年4月2日以後生まれの女性):
→65歳からの老齢厚生年金を繰り上げることができます(60歳から受給開始年齢までの間)。(老齢基礎年金も同時に全額繰上げになります。)

65歳より遅くもらいたい人は繰下げ受給

老齢年金は、手続きをすれば66歳以後に繰り下げることができます。年金額は受給開始年齢に応じて増額されます。増額された年金額は一生変わりません

【老齢基礎年金をもらい始める年齢と増額率】

1952(昭和27)年4月2日以降生まれの人

年金の増額率=(65歳になる月~繰下げ請求月の前月までの月数)×0.7%

繰下げ請求月 増額率 受給率(本来の年金に対して)
66歳0ヵ月~11ヵ月 8.4~16.1% 108.4~116.1%
67歳0ヵ月~11ヵ月 16.8~24.5% 116.1~124.5%
68歳0ヵ月~11ヵ月 25.2~32.9% 125.2~132.9%
69歳0ヵ月~11ヵ月 33.6~41.3% 133.6~141.3%
70歳0ヵ月~11ヵ月 42.0~49.7% 142.0~149.7%
71歳0ヵ月~11ヵ月 50.4~58.1% 150.4~158.1%
72歳0ヵ月~11ヵ月 58.8~66.5% 158.8~166.5%
73歳0ヵ月~11ヵ月 67.2~74.9% 167.2~174.9%
74歳0ヵ月~11ヵ月 75.6~83.3% 175.6~183.3%
75歳0ヵ月 84.0% 184.0%

※年金制度改正により、2022(令和4)年4月以降に70歳を迎える人、1952(昭和27)年4月2日以降生まれの人から、繰下げ受給による年金開始時期の選択肢が75歳までに拡大されました。75歳0ヵ月まで繰り下げると84.0%の増額となります。1952(昭和27)年4月1日以前生まれの人は70歳までしか繰り下げできません。

〈例〉

  • 1955(昭和30)年4月2日以前生まれで、65歳から年額795,000円を受けられる人が73歳0ヵ月から受けることにすると…
  • ●増額率=67.2%(受給率167.2%)
  • ●795,000円×167.2%=1,329,240円 → 1,329,240円(生涯の年金額)
  • ※年金額は、50銭未満は切り捨て、50銭以上1円未満は1円に切り上げになります。

(2023(令和5)年度)

ココがわからない!

老齢厚生年金は繰り下げてもらえないの?

65歳からの老齢厚生年金を66歳以後に繰り下げることができます。繰下げ受給は、老齢基礎年金と同時でも、老齢厚生年金だけでも可能です。ただし、特別支給の老齢厚生年金は繰り下げることができません。
増額率は老齢基礎年金と同じく月0.7%です。

なお、共済組合等も含めて複数の厚生年金保険の加入期間がある人は、すべての老齢厚生年金が繰下げ支給されます(一部のみ繰り下げることはできません)。

 

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